元日に発生した最大震度7の令和6年能登半島地震は、「のと里山海道」に大きな被害を及ぼし、今なお一部区間が通行止めのまま。奥能登へ向かう代替路線の国道249号には緊急車両と一般車両が混在し、支援活動に支障を来たしている。能登半島の道路はいったいどうあるべきか、交通工学、都市計画、防災計画を活用した交通・防災まちづくりなどが専門で、公立小松大学大学院の高山純一教授に話を伺った。
Q、現時点の対策として必要なのは
「地震発生から3週間が経過したが、交通面としては、まず、のと里山海道の一日も早い復旧(上下方向の啓開)が最優先。奥能登へ通じる道路が国道249号1本だけでは、上・下水道や被災し途絶した道路の復旧、避難所への支援などいろいろな面で制限される。二点目として奥能登地域の避難所への支援員は、ほぼ毎日、七尾以南の地域から通っていると思われる。朝夕の渋滞が必要以上のタイムロスになっているようで、これを解消しないと持続的な支援にならない」
Q、国策として国土強靭化を進めてきたが、最大震度7に耐えうる道路というのは現実的なのか
「すべての道路を最大震度7に耐えうる道路にする必要はないが、少なくとものと里山海道などの第一次緊急輸送道路は、地震が発生しても途絶しないようにしておくべきだろう。のと里山海道は自動車専用道路なので救急車・警察車両、支援物資の輸送トラックなど、優先的に走行許可を与えるべき車両と一般車のアクセスコントロールが可能になり、今回のような渋滞も発生しない。もちろん、県においても過去の地震の教訓を踏まえてのと里山海道の耐震化を進めてきたが、最大震度7に耐えうるまではできていなかったようだ」
Q、能登半島の道路複線化などの対策はどうあるべきか
「能登地域における将来の人口減少や経済活動を考えれば、道路の複線化対策が、主要幹線道路において必要になるとは考えていないが、県が進めているのと里山海道の4車線化事業は、もう少し事業化を早めておいてもよかったのかもしれない。そうすれば、片側の道路が何らかの形で被災しても反対側の道路を片側1車線として、使えた可能性がある」
Q、災害時における道路の緊急車両や自衛隊車両優先の法整備は必要か
「これもなかなか難しい問題で、自動車専用道路であれば、出入りのコントロール(アクセスコントロール)が可能なので、法整備をしなくても現状、警察の権限で、緊急車両・自衛隊車両の優先通行は可能だと思うが、国道249号といった一般道路の場合、沿道に民家や企業が立地しており、生活権や経済活動権などがあるため、一時的な通行規制は可能でも、長期の制限はできないと考える」
Q、今回の教訓は
「一番手薄で足りなかったのは、発災直後の被災地の現状把握ではなかったかと思う。全容把握ができないため、なかなか情報発信もできず、最適な救助・救援活動が行われたかどうか多少疑問が残る。もちろん通信が途絶え、ほとんどの道路が被災し、被害の少なかった金沢方面からの救助・救援に時間がかかったので、仕方がない面はあるが、航空写真・衛星写真の分析やドローン調査など、もっとやれたのではないかと思う。ただ、元日夕方に発生したという、最悪の日時だったので、動けなかったのかもしれない」