北海道建設新聞社
2024/01/10
【北海道】能登半島地震被災地支援へ道内行政機関の職員派遣始まる
能登半島地震の発生から1週間余りが経過した。現地では度重なる余震に降雪が追い打ちを掛け、予断を許さない状況が続いている。道内では被災状況の調査や給水・被災者支援などを目的に行政機関、自治体による現地への職員派遣が始まった。建設業界からは義援金による支援表明も出ている。政府は能登半島地震を激甚災害の「本激」として指定する方針だ。9日には2023年度予算の予備費から約47億4000万円を支出することも閣議決定した。食料や飲料水などの緊急輸送に充てる考えだ。(関連記事4、12面に)
9日午後2時の時点で石川県内の死者は202人、連絡が取れない安否不明者は102人に上り、被害規模は現在も広がり続けている。被害が大きい輪島、珠洲など6市町はほぼ全域が断水し、大勢の住民を収容する輪島市の避難所は衛生環境が悪化しつつある。
道路は各地で寸断され、物資輸送のための主要ルートは積雪で一時通行止めとなった。山あいや沿岸の一部集落は外部からのアクセスが途絶し少なくとも約3300人が孤立。発生から1週間、震度1以上の地震は約1200回を数え、二次災害の懸念が広がる。
政府は激甚災害指定について、公共土木施設などの災害復旧をする場合、補助率を引き上げる地域を限定しない「本激」とする考えだ。
道内では行政機関による職員派遣などの支援が始まった。札幌開建は9日、被災した石川県内で水道施設の早期復旧に向けてTEC−FORCE(緊急災害対策派遣隊)を石川県庁に派遣した。日本水道協会と連携して復旧現場を巡回し、技術支援をする。帯広開建もチーム編成を済ませ、散水車も派遣できるよう準備。函館開建、網走開建も要請を待っている状況だ。
道建設部住宅局は、被災建築物応急危険度判定に関する応急危険度判定士の派遣に備えて候補者選定などの準備を進めている。
札幌市では、水道局が6日に給水タンク車3台と職員9人を派遣した。下水道河川局は10日から職員8人を金沢市に派遣し被災状況の調査を支援する。危機管理局は職員4人を石川県宝達志水町に派遣した。災害対策本部の支援などに当たる。
室蘭市は6日に職員2人と給水車1台を派遣し8日から給水支援などを進めている。恵庭市は職員4人と給水車1台を派遣し9日から珠洲市で本格的な給水作業を開始した。
江別市は14日から給水車1台、職員4人の派遣を決めた。函館市は18日から職員8人、給水車1台、サポートカー1台を派遣する予定だ。旭川市水道局も職員と給水車を派遣する。
岩見沢市、網走市は検討中だ。三笠市、砂川市、深川市、芦別市、稚内市は要請があれば検討するとし、北斗市も要請があれば適宜対応するという。苫小牧市は要請があれば動けるよう情報収集に努めている段階だ。
留萌市では物資輸送について「石川県から要請があれば飲食物や毛布、アルミロールマットといった物資を送る準備はできている」としている。
建設業団体は要請を待っている状況。北海道建設業協会は「全国建設業協会と共に動くため、要請を待っている。過去の例では義援金を集めて被災地に届けた」。札幌建設業協会も「義援金での支援を考えることになると思う。距離があるので現地に入るのは難しいのではないか。ただ要請が来たら受ける」と気を引き締める。名寄建設業協会では「3000万円程度の義援金を送ろうと動いている」と話した。
主要ゼネコンの動きを見ると、中山組(本社・札幌)は義援金の検討を進めている。伊藤組土建(同)は検討段階には至っていないが「現地の受け入れ体制が整っていない中で支援物資を送ることはできない。義援金になると思う」と話す。
丸彦渡辺建設(本社・札幌)は「単体で行動はしないが、札幌建協のリーダーシップの下で支援活動に参加するほか、親会社である清水建設のグループ企業としても積極的に取り組みたい。清水建設は現地に拠点があるので既に支援に乗り出している。グループとしての支援はこれから」という状況だ。
堀松建設工業(本社・留萌)は「東日本大震災の時に船を出して土砂撤去に当たった。できることがあれば検討したい」と臨戦態勢だ。
専門職種団体である全国建設室内工事業協会北海道支部は「復旧が本格化する数カ月後に現地で内装工の職人不足が生じると思う。道内から仕事で支援に行く状況になるだろう」と推測する。
義援金による支援の輪は道内の自治体で拡大している。被災地が姉妹都市であるとして義援金を送ることを検討している羽幌町は石川県内灘町に500万円を送ることを決めた。津別町は姉妹都市である山梨県南アルプス市の姉妹都市が石川県穴水町のため、穴水町への支援を検討中だ。
名寄市、東川町が公共施設に義援金箱を設置し、鷹栖町は災害義援金の受け付けを始めた。士別市も10日中には設置する。帯広市、紋別市が準備を進めている。オホーツク管内南部の市町村でも検討を進めている。