県土木交通部と県建設業協会による意見交換会が20日、滋賀県建設会館(大津市におの浜)で開催され、社会資本整備のさらなる推進―など業界の抱える課題8項目について認識を共有した。
この日は、県土木交通部から三和啓司部長、理事ら13名、協会から奥田克実会長をはじめ副会長、支部長ら20名が出席。
冒頭、三和部長は「気候変動により起こる様々な災害に対して、貴協会のご支援が欠かせない一年となった。感謝申し上げます」と前置きした上で「国の補正予算成立に伴い、県も150億円余りの補正を計上しており、その執行と円滑な施工にご協力を頂きたい」と挨拶。奥田会長は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策もあと2年。県と我々協会が一体となり県民の安心・安全を実現してまいりましょう」とこれに応えるとともに「今日の意見交換は地元建設業界の抱える重要な課題であり、忌憚なきご意見を」と語り、意見交換会の意義を強調した。
質疑では、協会側が@社会資本整備のさらなる推進A土木事務所管内建設業の受注機会拡大と地域間格差のない発注B大型工事の発注CPFI事業D設計・積算に関する事項E施工段階に関する事項F工事検査G建設工事におけるカーボンニュートラルの推進―以上8項目について具体的な事例も含めて改善・協力を求めた。
主な内容は次の通り。
@社会資本整備のさらなる推進
「防災・減災、国土強靭化」、「道路・河川等の整備」、「予防型インフラメンテナンスの推進」―以上に係る継続的・安定的な予算の確保を協会側が求めたのに対して、県側は国土強靭化については「県予算への積極的な積み上げ」をはじめあらゆる場面で予算確保に努めるとともに、インフラメンテナンスの推進ではメンテナンス技術者養成協議会を中心に県・協会などが足並みをそろえて技術者育成に努めるとした。
A土木事務所管内建設業の受注機会拡大と地域間格差のない発注
協会側は、県下の各出先機関および各格付発注件数、年度の事業量を調整のうえ、適切な地域要件を設定し、各格付企業が平等に入札参加機会を得られるような発注を要望。県側は、総合評価において手持ち工事の少ない企業を加点する「受注機会促進型」を試行するなど県内企業が平等に受注できる環境づくりに今後も努めていく、とした。
B大型工事の発注
「WTO対象とならない、現行では22億8000万円以下の工事については、すべて県内建設企業に限定した入札参加要件の設定を求めるとともに、WTO対象工事についても、工事の分割などの工夫により県内建設企業単体、あるいは県内建設企業同士のJVなど入札参加要件を設定し、さらなる県内建設企業の受注機会の拡大を」と協会側は要望。県側は「県内で出来るものは県内発注に努めている。一方で競争性の確保も無視できず、総合的に判断していく」と回答。
CPFI事業
協会側は「県内における経済波及効果の高い従来型手法による発注」を求めるとともに、「土木交通部から関係部局に働きかけを」と要望。県側は「県の定めた方針に基づきPFI導入の可否を決定している。業界の声は各部局へ伝えていく」とした。
D設計・積算に関する事項
「建築情報モデリング(BIM)の活用」を協会側は提案。県側は「ありがたいご意見。既にモデル的に導入を始めており今後、すべてにおいて活用していきたい」とした。また、現場と設計の整合が取れていないなどの問題については県側が「県・施工者・コンサルタントの3者による工事施工調整会議を活用していく」とし「その際の経費は研究を行う」と回答。さらに協会側は労務単価の見直し、生コン単価の早期設計価格への反映、除草・伐採の費用―なども要望。県側は、賃金は最新の積算基準を基に設定。急激な物価上昇による契約後の変更はスライド条項による適用を行っているが、常に研究を行って行くとした。
E施工段階に関する事項
協会側は「設計変更における変更契約」について質問。「追加工事が全く異なる新工種や準備、調整等に経費を要する特殊工法等施工体制が変わる工種において、適正な変更契約(官積算100%)について引き続き検討を」としたのに対して県側は検討するとした。
F工事検査
協会側は「滋賀県では、工事関係書類の簡素化に取り組んでいただいている」としたうえで「関東地方整備局の土木工事書類スリム化ガイド」を参考とした更なる簡素化を求めるととも適切な工事成績評定と通知を受けた工事成績評定点に疑問があり、再質問を求めた場合においては再説明の前に双方が意見交換できる機会の創設を求めた。県側は「コミュニケーション不足とならないように努めることが重要」とした。
G建設工事におけるカーボンニュートラルの推進
協会側は「県では、今年度から総合評価方式において建設産業におけるCO2削減の取り組み推進のため、低炭素型建設機械の使用を評価する『CO2削減型取組評価モデル工事』を新たに加えられましたが、今後、CO2削減の取り組みについてどのような方針をもっておられるか」と質問。県側は「成績評定を適切に行える仕組みづくりを国等の状況も研究して今後につなげていく」とした。
提供:滋賀産業新聞