神奈川県企業庁は、相模ダムリニューアル事業の概算事業費を約420億円に増額し、事業期間も2042年度までに延長することを明らかにした。18年度末に策定した事業計画からは、事業費で約168億円の増加、事業期間が4年の延長となる。
企業庁では、リニューアル事業の実施計画の策定に向けて、現地調査による基本資料の収集、構造や配置の検討を行った。調査を踏まえ、ダム直下など下流施設工事などの施工方法の変更や工事期間中の安全性を高めるための変更が必要だと判断。工期の延長を決めた。
工期延長の主な原因としては、労働基準法の改定に伴って完全週休2日制を徹底した工期を設定しなければならなくなったことにより、コンクリート打設の作業効率が低下することを挙げた。従来は土曜日を含めた6日間の連続的な施工の中で、コンクリートの打設・養生・後処理のサイクルを1週当たり4サイクル回すことが可能だったが、完全週休2日制の導入後は3サイクルに減少すると予測している。
事業費の増加に関しては、下流施設工事の工法変更により約50億円の増額となっている。当初の想定よりも地盤が固いことが判明したため、進入路となる延長約500bの仮桟橋の施工方法を特殊工法に変更する必要が生じた。
また、安全性を確保するために施工規模の見直しを行ったことで、新たに構築する洪水吐ゲートなどのピアの幅が当初の2・5bから3bに広がり、高さが3b高くなったことで、施工に要するコンクリート量が増加。資材の鉄筋が約43%、コンクリートが約27%高騰しているために約80億円の増額を見込んでいる。その他、労務単価の高騰や完全週休2日制導入などに起因する経費の増加も全体工事費に上乗せした。
工事費を抑制するため、放流施設工事では貯留した水を放流する箇所の構造を変更。水中部の作業を減らすことで約28億円を削減。副ダムを当初より上流側に設置し、施工規模を縮小することにより約20億円のコスト抑制を図っている。
提供:建通新聞社