建設新聞社
2023/12/14
【東北・岩手】奥州市が新医療センターの整備基本構想案
奥州市は、市総合水沢病院に代わる新医療センターの整備基本構想案をまとめた。概算事業費は最大74億2000万円と試算。2029年度の開所を目指して事業を進める方針だ。
同市は人口減少や高齢化、医療従事者の慢性的な不足などの課題を解決し、持続可能な地域医療体制および介護体制を早急に構築する必要があることを踏まえ、市立医療施設、県立病院などの機能分化・連携強化を図り、ネットワーク型による地域医療体制の構築に向けた目指すべき姿となる「地域医療奥州市モデル」を6月に決定。その中で、新医療センターは単純に総合水沢病院の建て替えとするのではなく、医療圏域内の利便性や付加価値の高い新たな複合型医療施設として整備する方針を示している。
基本理念は「いのちと健康を守り支える『地域の医療コミュニケーション拠点』をつくります」とし、治療のみではなく予防や健康づくりなど、地域全体の健康を支える拠点として、医療を通じまちを元気にする施設を目指す。
基本方針には▽地域医療で必要とされる診療機能の充実▽在宅復帰支援の強化▽在宅医療の充実▽予防医療の充実▽小児医療の充実▽救急医療の継続▽感染症対策の充実―など14項目を挙げる。
整備予定地は同市水沢中上野町1の85地内の水沢公園陸上競技場とその周辺。利便性が優れているほか、駐車場やバスロータリーの設置にも十分な広さを有しており、県立胆沢病院とも近く相互アクセスが容易となる。また、新たな土地取得費が発生せず立地適正化計画エリアにより国庫補助事業の活用が見込めることなどを踏まえ決定した。
病床数は、一般・地域緩和ケア80床、感染症4床の84床をベースに多角的に検討。また、母子・子育て支援やヘルスケアに必要な相談カウンター、面接室、会議室、多目的ホールなどのコミュニティ機能も整備する。
建物は、色彩も含めユニバーサルデザインを採用。災害時に継続して医療を提供できる体制を整えるため、安全性・耐震性を確保するほか、自家発電装置などの必要な設備を整備。また、地域の避難需要に対応する設備を備えるとともに、省エネルギーと施設の長寿命化に配慮した、ZEBReady要件を満たす施設とする方針。
整備スケジュールは、2023〜24年度で基本構想・基本計画、24〜25年度で基本設計、25〜26年度で実施設計などを予定し、26年度の終盤から建設を開始。29年度の供用を見込む。
整備手法は、従来方式、DB方式(設計施工一括発注、詳細設計付工事発注)、ECI方式のメリット、デメリットを勘案し、選定する方針だ。
道路拡幅など敷地外の工事費用を含む総事業費は基本計画で示すとしているが、現時点での粗い試算に基づく概算額は、建築工事の病院分に33億〜43億円、付属棟分に11億〜15億円、外構工事に4億円、設計監理に2億5600万円〜3億2500円、医療機器・備品に5億3000万円、その他に3億6500万円の計59億5100万円〜74億2000万円となっている。
提供:建設新聞社