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北陸工業新聞社
2023/12/05

【福井】日本建築家協会/JIA/北陸支部福井地域会/遠藤克彦氏招き建築文化講演会開く

 日本建築家協会北陸支部の福井地域会(原田学会長)は2日、35回目の建築文化講演会を開催した。会場は、福井市西木田2丁目の福井商工会議所で行われた。
 講師には、建築家の遠藤克彦氏(遠藤克彦建築研究所代表)を招き、演題の「新たな公共性の獲得に向けて」を聴いた。学生を含む約70人が参加した。

新たな公共性

 遠藤氏は、自作の大阪中之島美術館や茨城県大子町新庁舎、門真市立生涯学習複合施設を取り上げ、個人住宅「包の家」も紹介した。
 設計競技に向かう上では要綱を熟知し、社会要請の木材利用率を高め、自然災害も想定。建設場所の本質的なポテンシャル(風の道)を理解するなど。建築で表現し、応える可能性や使命感を示した。
 この中で、新たな公共性に関し、自問自答を重ね、今の解は「外との接続が多い建物で、都市に自分の居場所を作れるように」と提案。「地域の歴史を背負うには、体力と勇気が必要」であり、「建築家は、建物に時代性を刻印する大きな責任がある」とも指摘した。

設計プロポの秘訣

 建築空間を考える時、恩師が指摘した「性善説を前提にせず」を肝に銘じ、念頭に置くのは「今の時代、何が起きるか分からない」という教え。
 設計競技に勝つ秘訣は(当初10年ほどは連戦連敗)「持てる力を全て発揮。守りに入ってはチャンスを逃す。近道はない。だからこそ準備が大切」と強調。「乗り越えるべき壁ばかりだった。しかし、わらしべ長者的に、少しずつ勝てるように。秘訣は(全力で挑む)覚悟しかない」と直言。
 学生にむけ、アドバイスし「急がない方がいい。ゆっくり、知識とチャンスを、つかんで欲しい」と、長い仕事人生にエールを送った。
 建築家は「外部と内部、構造も含め、全てを等価に、同時に説く。それが役割。意味をデザインする統合(インテグレーション)がますます重要になる」と、発想を部分から全体へ移す、一体化の重要性を示した。

人命が一番建築は支え

 原田会長がまず、最先端の考え方や、感覚に触れてほしいと主旨を交え開会挨拶した。
 また、北陸支部の堂田重明支部長が閉会挨拶し、遠藤氏が明言した、建築家の役割は、建物に時代性を刻印する点に、共感を示した。
 懇親会も、建築談義に花が咲いた。遠藤氏は大学教授も務め、学生には「人命が一番で、なにより大切。建築は支え手」である普遍的な価値を、教え導く経験などを話した。

【後援】

福井市
日本建築学会北陸支部福井支所
福井県建築士会
福井県建築士事務所協会
福井県建築設計監理協会
北陸工業新聞社福井支局ら

hokuriku