神奈川県県土整備局は、ICT活用の普及へ本腰を入れる。ICT活用工事をより小規模の現場でも活用できるよう、土工での対象の拡大を目指す。7月には神奈川県i❘Construction推進連絡会の下に実務者部会を設立。「ICT建機を使うだけがICT活用ではない」との思いから、中小建設業のICT導入に向けてハードルの撤廃を進めていく。12月には始めの一歩として3次元設計データを扱うオンラインセミナーの開催を決めた。
県では2017年度からICT活用工事を推進しているが、開始から7年になる現在でも普及しているとは言い難い状況だ。都市化が進んでいる県では大規模なICT建機の投入が難しいことに加え、「ICT=大規模建機」というイメージが先行しているために中小建設業者には現実的な手段として認識されていない状況がある。
県は17年9月にICT活用モデル工事の実施要領を定め、土工を対象に試行を開始した。19年度に舗装工(路盤工)も追加し、土工の対象数量を1000立方b以上に拡大。22年12月には舗装修繕工、23年度には法面工と、適用工種を追加した。
22年度のゼロ県債工事を含む23年度の実績は、23年9月時点で土工5件、舗装修繕工3件、法面工6件で受注者が実施を希望している。
17〜23年度までのICT活用工事の施工件数は、23年9月時点で54件と、毎年10件程度にとどまっている。これまでに県のICT活用工事を経験した事業者は約40社。ICT活用工事を経験した事業者はリピーターになりやすいという傾向がある。
〜12月15日にオンラインセミナー開催〜
県は12月15日にオンラインセミナーを開催する。3次元データの扱い方などを紹介し、県内中小建設業者のICT導入のための第一歩としたい考えだ。技術管理課は「大規模なICT建機を使うことだけがICT施工ではない。難しそうというイメージを払拭して、少しでも興味を持ってもらいたい」と話す。初期には大規模建機による施工ばかりが注目されたため、「生産性は上がるが建機の費用で結果的に赤字になる」など、マイナスイメージが広がってしまったことも普及を妨げている要因ではないかと分析している。
技術管理課は「ICT工事をすることではなく、ICT活用により省人化・省力化することが目的だ」と強調。「さまざまな工種でICTを進めてみなければ、ICT施工がなじまない工種などの分類もできない。まずは数を増やさなくてはならない」と現状を認識している。「まずはできることから3次元データに慣れてもらって、ICT活用に対する心理的なハードルを撤去したい」と意気込む。24年2月には、セミナー受講者を中心として3次元データを作り、使ってみる体験会も開催する予定だ。
提供:建通新聞社