公共工事における諸課題の改善を目指し、(一社)千葉県建設業協会、関東地方整備局、県、千葉市による意見交換会が9日、千葉市にあるTKPガーデンシティ千葉3階シンフォニアAで行われた。あいさつに立った橋順一会長(轄kエ工務店)は「担い手確保は、建設業界だけでなく、発注者と協働して取り組むべき大きな課題。そして、2024年4月1日からの時間外労働の上限規制にも対応していかなければならない。われわれの使命であるインフラの整備と災害対応のためには、継続して経営していける環境が必要」と話した。
藤巻浩之局長は、台風13号の接近に伴う大雨による被害に触れ、「補正予算案が20日頃に臨時国会に提出されるのではないかというニュースが出ている。補正予算が使えるようになれば、県、市をはじめとする関係者と力を合わせて強靱化にしっかりと取り組んでいく」と述べた。また、協会からの要望などを踏まえ、工事発注のあり方について検討し、24年度を良い形で迎えられるよう努力すると誓った。
池口正晃・県県土整備部長は、災害時における協会の協力に謝意を表し、「災害に対応できる力を維持していただくことが重要。担い手確保、DXによる効率化、週休2日制適用工事、適切な工期設定などについてしっかりと意見交換し、改善していきたい」と祈念した。
整備局は、総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置などの取り組み、CCUSの就業履歴蓄積と能力評価の加速化に向けたさらなる取り組み強化など建設産業行政の最近の動き、22年度に寄せられた意見・要望への対応状況を報告した。
協会は、国・県などに対する要望・陳情、地震・風水害など災害への対応、広報といった活動を紹介した。
また、意見交換のテーマとして▽建設業の分業化▽働き方改革に伴う工事への対応▽積算基準▽格付Cランク発注案件▽一般競争入札での賃金アップに対する加点措置――を提案した。
建設業の分業化については、工事開始から完了までの工程(施工計画作成、施工管理、設計変更の対応、竣工図書の作成など)を分業化することにより主任技術者が現場施工のみに専念できるよう、制度改正を提案・要望した。
整備局は、主任技術者と監理技術者の配置および専任義務緩和についての要望を本省に伝えるとした。
24年4月1日からの時間外労働の上限規制の本格適用を見据え、働き方改革に対応した日当たり作業量の見直しや適切な工期設定など、早期の対応を要望。さらに、週休2日制の適用により現場作業員の所得が減らないよう、労務費単価などの見直しも要請した。
整備局は、日当たり作業量の見直しや検討の状況などを紹介した上で、意見を本省に伝えるとともに、実態把握に努めていくと応じた。
国・県発注工事における施工パッケージ型積算方式について「非常に分かりにくい」と指摘。協力会社へのしわ寄せ、工程管理の煩雑化による現場職員の負担、予定価格と見積額の乖離(かいり)による入札不調などの発生が危惧されるとして、積み上げ型積算方式に戻すか、施工パッケージ型とする根拠を明示するよう求めた。
整備局は、施工パッケージ型により積算の効率化や受注後の協議の円滑化が図られているとし、積み上げ型に戻すことは困難との見解を示した。
国が発注する土木一式工事において、格付BランクおよびCランクや、Bランクのみを参加資格要件とする案件が増加していることに言及。県内本店のCランクを要件とする案件の増加と、予定価格上限枠の引き上げを提案・要望した。
整備局は、Cランクの発注工事が増加傾向にあると明かしたほか、予定価格上限枠の引き上げの要望を本省に伝えると述べた。
原材料の高騰や下請け業者不足による外注費の増加を背景に、赤字の工事が増えていると指摘。これに加え、一般競争入札で賃金アップに対する加点が行われていることについて「公共工事の品質確保のために導入した一般競争入札の理念をゆがめるもの」と強調し、改善を要請した。
整備局は、賃上げ実績確認の際に柔軟に対応していると説いた上で、寄せられた意見については本省に伝えるとした。