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北陸工業新聞社
2023/11/06

【石川】23年秋の叙勲/水野一郎氏に旭日双光章/県の文化財保護に大きく貢献/「文化立県の一つの柱に」

 2023年秋の叙勲受章者が発表され、文化財保護功労として元石川県文化財保護審議会会長の水野一郎氏が旭日双光章を受章した。1984年11月から同審議会委員、2017年3月から23年1月まで同会長を務めるなど長きにわたり、文化財保護に貢献した。

 県文化財保護審議会は県教育委員会からの諮問に応じて文化財の保存、活用に関する重要事項を調査審議し、建議する。委員は漆芸や動物、古文書・歴史資料、史跡・考古、民俗、植物、美術工芸、建造物などの専門家で構成される。「審議会会長および委員として約38年間、文化財保護に携わった。古文書や仏像、天然記念物、祭りなど様々な石川のお宝を見て歩く、こんないい役割、仕事はないだろう」と微笑みながら、文化財指定で印象に残るのは「輪島の海女漁の技術をはじめ、美川のおかえり祭り、能登島向田の火祭、建築では中谷家住宅、雄谷家住宅、阿岸本誓寺本堂、聖霊修道院聖堂など本当に感動した」と振り返る。
 水野氏自身、建築家として金沢のまちづくりに寄与してきたが、「金沢は江戸から令和までの建築文化の歴史的重層性が特徴だが、過去のものを大事にし、それと同じように自分たちの時代のものをつくること、保存と開発、伝統と創造という対立するものを真に重要だと感じるようになったのは、文化財保護の仕事に関わったことが大きい」と強調し、「石川にはいろんな歴史文化が縄文以来、県内に折り重なっている。それは日本でも数少ない戦災や大きな災害に遭っていない地域だからだ。それらをきちんと保存し、新しく解釈して、我々の資産として運用していくことが大切」と捉える。
 今年1月に審議会会長を退任したが、「この仕事は金沢や石川の性格をつくるもの。文化立県の一つの柱はこうしたストック。ぜひ、楽しんでやって欲しい。私が叙勲を受章したことも励みになればいい。白山や手取川のジオパークなど、県内にはまだ発見されていないテーマや物語がありそうだ」と関心は尽きない。
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 みずの・いちろう 1941年、東京都生まれ。東大工学部建築学科卒、東京藝大大学院修士課程建築学専攻修了。大谷研究室を経て、金沢工大教授、副学長を務め、現在、同大教育支援機構教授・芸術学修士。2019年から谷口吉郎・吉生記念金沢建築館の初代館長。金沢市寺地在住。82歳。

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