建通新聞社(中部)
2023/10/27
【三重】リニア三重県同盟会 早期開業へ決議案承認
リニア中央新幹線建設促進三重県期成同盟会は10月24日、津市内で総会を開いた=写真。ルートと県内への停車駅設置の早期確定、東京大阪間の早期全線開業に向けた取り組みを盛り込んだ決議案を承認した。一見勝之会長(三重県知事)はあいさつで「三重県の発展はリニアにかかっている。一日も早い完成を心待ちにしている」とする一方で「名古屋以東は遅れる可能性がある。日本経済にとってどれだけの損失となるのか」と懸念を示した。会には167人が出席した。
来賓あいさつで水野孝則JR東海専務は現在の進捗状況を説明、着工できていない南アルプストンネル静岡工区に関して「早期着工に向けて引き続き真摯(しんし)に対応していきたい」と語った。環境影響評価については地形や地質など膨大にある詳細部分を詰めている最中とし、事業を進めるに当たって沿線自治体の協力を求めた。
2022年11月に亀山市内の県内駅候補地を3カ所に絞り込み、JR東海と国土交通省に提示、名古屋大阪間の23年中の環境影響評価への着手を求めていた。しかし、23年に入りJR東海側から年内の法的手続き着手が困難であるとの発表があった。6月に閣議決定された骨太の方針に「全線開業の前倒しを図るため、建設主体が本年から名古屋大阪間の環境影響評価に着手できるよう、沿線自治体と連携して、必要な指導・支援を行う」と示しており、国家戦略としても早期の取り組みが求められている。
これらを背景に同盟会の行動指針となる決議案には37年開業が確実になるように早期着工、未着工区間の協議の迅速化を行い、県内の概略ルート、駅位置の早期公表に向けた準備を連携、協力して進めることなどが盛り込まれた。駅位置に関しては、建設コストなどによって左右されないように注意喚起がなされた。
会の中で三重県が策定作業を進めている「三重県リニア基本戦略(仮称)」の概略が示された。リニア開業後のイメージを共有するための指針となるもので、「暮らし方・働き方」「観光・交流」「産業・経済」の三つを柱に、都市部への移動時間の大幅な短縮に伴う変化に対応した地域独自のライフスタイルの創出や、周遊観光、地域の強みを生かした産業の育成などについての方向性を盛り込んでいる。基盤整備の面では、駅勢圏拡大に向けた道路ネットワーク整備、交通ターミナル整備、二次交通の充実・地域公共交通の再構築、駅周辺のまちづくりを挙げる。策定へのスケジュールは、12月に県議会で中間案を説明した後、パブリックコメントを実施、24年1〜2月にかけて県内市町や経済界、有識者への意見聴取を行う。3月上旬には最終案を県議会で説明し、下旬に策定、公表する。概略の駅位置、ルートが公表された際には、より詳細な計画の策定に着手するとしている。
一見知事は総会後、記者団に対し「ダメージがあることを認識しながら進める必要がある」と語った。また、環境影響評価の準備作業に入っていることがJR東海から総会の中で説明があり、「県として最大限の協力をする」とし、地形に関する相談や用地買収、残土処分で協力していくとした。工事が本格化した後は「駅周辺部についてしっかりと力を用いていきたい」と話した。
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