建通新聞社
2023/10/18
【大阪】近畿ブロック会議、万博工事の情報開示など
全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)の2023年度近畿ブロック会議として、近畿建設業団体協議会と国土交通省との意見交換会が10月16日に奈良市内で開かれ、各府県建設業協会からは入札・契約制度の改善や建設資材の価格高騰への対応などを求める意見が出た。その中で、大阪建設業協会は大阪・関西万博について、積極的な情報開示を求めるとともに、作業員の不足や賃金の急激な高騰が周辺の京阪神地区の工事に影響を与えないようさまざまな対策を要望。これに対して国交省側は、「受注の判断に必要な情報の提供が第一だ」との認識を示すとともに、「皆さんの意見を真摯(しんし)に受け止め、政府一丸となって(問題の解決に)取り組む」と述べた。
〜「事前準備にも万全を」〜
大阪建設業協会は、「大阪・関西万博工事を円滑に進める上では、作業員や建設資材の輸送、近接したストックヤードの確保など諸問題の解決と、電気・上下水などインフラの早期供給が不可欠」と指摘。工事着手時にスムーズに施工が進められるよう「事前準備にも万全を期してほしい」と要望した。
また、万博工事を優先することで、周辺の京阪神地区の工事に作業員の不足や賃金の急激な高騰、建設資材の不足・高騰といった影響が生じないよう、さまざまな対策を講じるよう求めた。
〜さらなる改善に向けて調整〜
国交省側は、「円滑な受発注と現場の施工状況の改善がともに進むよう危機感を持って取り組んでいる」とした上で、「受注者側にしてみれば、受注の判断に必要な情報がしっかり提示されることが第一。国交省でも局長級の調整会議で意見を吸い上げて、万博協会や大阪府市に対して意見を申し上げ、さらなる改善に向けて調整を図る」と述べた。さらに、「厳しい問題ではあるが、政府一丸となって取り組んでいくという方針の下、皆さんの意見を真摯に受け止め、目に見える改善を進めていきたい」との認識を示した。
冒頭のあいさつで、近畿建設業団体協議会を代表し、幹事協会である奈良県建設業協会の山辺元康会長は、「自然災害の頻発化などを背景に、国土強靱(きょうじん)化の重要性を改めて認識している」とし、継続した公共工事の実施を要望。さらに、「地域建設業者が地域の守り手として、国民の安全・安心の確保を確かなものにしていくためには経営基盤の強化・安定化が必要だ」と理解を求めた。
国土交通省の蒔苗浩司大臣官房審議官(不動産・建設経済)は、公共事業予算に関連して「24年度の概算要求では、公共事業関係費として前年度比1・19倍を要求している。防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を含め、必要かつ十分な公共事業予算を確保するとともに、資機材価格高騰などを踏まえた事業量の確保にも取り組む」との考えを示した。
また、建設キャリアアップシステムを通じた技能者の処遇改善について、「公共事業労務費調査の結果を基に、技能・経験に応じたレベル別年収を示した。若い世代の人が建設業に技能者として入職し、経験を重ねていけるよう、処遇面でのキャリアパスを示したものだ。他産業にはない建設業独自のものであり、これからさらにより良いものにしていきたい」と説明。業界全体で共有することで、賃上げや適正価格での受発注が進むよう、理解と協力を求めた。