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建設経済新聞社
2023/09/21

【京都】旧小川家住宅を飲食店に活用 特徴的な外観保存し継承

 京都市東山区の伝統的建造物の旧小川家住宅を飲食店として活用するため、用途変更及び一部増築する計画が進められている。
 京都市の「歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を適用し、地震及び火災に対する安全性を確保した上で、建築基準法の適用除外の指定を受け、保存活用を進める。
 旧小川家住宅(京都市東山区下河原通高台寺塔之前上る金園町390−2、390−3、八坂塔之下星野町88、89−6で敷地面積は756・777u)は、主屋がW造2階建、延216・349u(建築面積149・239u/建築年代は大正3年以前)、離れがW造地下1階及び平屋建、延116・485u(建築面積77・021u/建築年代は大正12年以降)、奥離れがW造平屋建、延22・749u(建築面積24・480u/建築年代は大正12年以降)で、3棟全て伝統的建造物。
 改修後は、W造地下1階地上2階建、延432・779u(建築面積258・461u)。
 八坂の塔(五重塔・重要文化財)がある法観寺の西側に位置。東大路通から東に入ると、急峻な八坂通の坂道があり、通りに面して土産物屋や旅館が建ち並び、高台寺から清水寺へ続く観光地の一部となっている。
 八坂通に面した平屋部北面の壁には、木瓜型に塗りまわされた虫籠窓が4つ並び、腰は板張りとなっている。八坂通から法観寺までの特徴的な外観を保存し継承する。
 外観の保存に配慮しながら、建物を維持するために必要な客席を確保するため、主屋と離れをつなぐ形で地下に増築し、その部分を客席とする。地下増築の屋根面を庭で覆い、外観に大きな変更を生じないようにする。
 離れと奥離れの間には、過去に渡り廊下が存在していた写真を基に、増築し復元する。
 建物内部の既に大きく増改築されている主屋の部分に厨房、カウンター、物販等の機能を集約。保存状態のいい部屋は、なるべくそのままの姿で客席として活用する。
 カフェは約50席、レストランは約8席を収容する予定。
 火災に対する安全性の確保として、木造火災に有効な強化液消火器の設置、ガスコンロのフードに自動消火設備の設置、厨房(コンロ周り)の内装仕上げの不燃化を図る。屋根を不燃材(瓦、銅板等)とし、外壁を防火構造(土壁、荒壁パネル)とする。
 自動火災報知設備の設置、自動火災報知設備と連動した自動火災通報装置の設置、非常用照明・誘導灯の設置、階段の緩勾配化・手すり設置のほか、電気配線は全更新、漏電・感電ブレーカーの設置を行う。
 建物の健全性の確保として、価値ある内装・仕上材を可能な範囲で残し、腐朽・破損等が確認された構造部材の交換や、最小限の改修とすることで歴史的建築物の価値を継承する。
 仕口部分において、緩んでいる箇所は金物による接合部の一体化を図る。
 主屋で不同沈下がみられるため、鉄筋コンクリート造耐圧盤を新設し、アンダーピニング工法により解消するとともに、今後の不同沈下の抑制や北及び西側の崖に建築物の荷重による負荷の軽減を図る。
 離れの地下1階の躯体は、無筋コンクリートのため、鉄骨部材による補強を行う。
 地震時における安全性の確保として、既存の耐震要素である土壁にあわせ、変形性能に富む荒壁パネルにより耐震補強する。主屋・離れの屋根の軽量化(土葺き→引掛浅葺き)を図る。
 諸手続きを経て、令和5年11月頃に工事着手し、6年11月頃の完成を目指す。