近畿地方整備局と一般社団法人・滋賀県建設業協会(奥田克実会長)による意見交換会が11日、びわ湖大津プリンスホテル(大津市におの浜4丁目)で開かれ、「社会資本整備の着実な推進」や「国土強靭化ならびに社会資本整備の着実な推進のための公共事業予算の確保・拡大」など協会側から示された11項目について協議した。
この日、協会側から出されたテーマは@国土強靭化ならびに社会資本整備の着実な推進のための公共事業予算の確保・拡大A運用指針の徹底ならびに適正価格での受注B工事関係書類の更なる簡素化・標準化と書類作成業務補助の制度化C設計図書の精度向上および円滑な工事着手のための事前準備D工期を踏まえた費用の算定E入札手続き日程F総合評価方式のタイプG不可抗力による損害及びスライド条項適用に伴う受注者負担H一時中止についてI成績評点に関する事項J建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用―以上。
当日は、同局から小島優企画部長や県内の出先所長ら4名、協会から奥田会長ら18名、そして滋賀県から土木交通部監理課の草川佳代課長ら4名が参加。開会に先立つ挨拶で、小島企画部長は「我々発注者は、中・長期的な観点をもって皆様へ継続した事業量を提供しながら共に生産性の向上を図りたいと考えております。本日は、現場の生の声を頂き、解決策を模索出来たら」と語った。また奥田会長は「業界は今、人材確保やDX・働き方改革の推進など、様々な変化にスピード感を持って対応しているところであります。発注機関につきましてもスピード感を持った施策の展開を期待しております」と述べた。
近畿地方整備局と滋賀県建設業協会による意見交換会の内容は次の通り。
◎国土強靭化対策ならびに社会資本整備の着実な推進のための公共事業予算の確保、拡大
協会側は、国土強靭化基本法の改正、国土強靭化基本計画と国土形成計画の閣議決定に伴い、@現行の国道改築およびバイパス事業(国道1号、8号、161号、307号)A道路施設の維持補修、河川改修事業B滋賀・京都間の国道1号バイパスの事業化C神名阪連絡道路の事業化D大戸川ダムの早期着手―の早期事業推進を求めた。局側は、先ずは残された今年度予算をしっかりと執行し、新たな予算も充分確保した上で、各事業計画を社会情勢に対応しながら推進し、皆さまにお仕事をして頂ける環境を整えていきたいと返答。
◎運用指針の徹底ならびに適正価格での受注
建設業が担い手を確保・育成するとともに地域社会に貢献できるようすべての発注者に対し、運用指針の周知徹底を求めることに加え、設計金額100%で請負しなければ、品確法で義務付けられている適正利潤を得ること難しいことから、建設業が置かれている環境に沿った工事積算体系に基づく適正価格で請負できるようにと要望。発注者側は、関係する機関と連携しながら適切な対応を行うと約束した。
◎工事関係書類の更なる簡素化・標準化と書類作成業務補助の制度化
協会アンケートでは『発注者向け書類が多く、時間外労働に至っている』との回答が突出していることから、さらなる工事関係書類の簡素化・標準化の推進を求めると、役割分担の明確化を図り負担軽減を図る。残業については全国的な問題として重くとらえている。広い視野で解決策を探っていると答えた。
◎設計・積算に関する事項
協会側は▽設計図書の精度向上および円滑な工事着手のための事前準備▽工期を踏まえた費用の算定―を昨年同様に要望したところ、速やかに工事着手できる環境整備を急ぎ、皆さまからのご指摘に真摯に対応していくと応じた。
◎入札契約に関する事項について
協会側は、土日を含まない入札手続き日程を求めた。これに対して局側は調整を進めている。早期に納得のいく形を見つけ出したいとした。
◎総合評価方式のタイプについて
企業の施工能力や配置予定技術者の能力について、評価しない「施工能力確認型」の発注件数増を求めた。発注者側は、年間工事数を踏まえ件数検討を急ぐと回答。
◎不可抗力による損害及びスライド条項適用に伴う受注者負担
通常の工事での不可抗力による損害は請負代金額の1%を受注者に負担を求められていることから廃止を求めたところ、デリケートな部分は含まれていることから、本省に本日の皆様の意見を伝え、最も適した対応を行わせて頂くとした。
◎施工段階における事項について
昨年度、「一時中止の検討が必要となった時点、中止通知を行うなど適切な運用を行うよう継続して指導していく」との回答であったが、依然として検討協議が煮詰まってからでないと中止が打たれない状態が続いていることに対して局側は、速やかな判断ができる環境整備に着手している。皆様のご指摘を重く受け止め、発注者として皆様に沿った対応を行うと話した。
◎成績評定に関する事項
工事成績は施工プロセスの中で評価されるものであり、完了検査での書類整理の良し悪しの評価が評定に反映されていることは簡素化の流れからも逆行していると質問。検査体制を精査し適切な評価を図ると返答。
◎建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用
CCUSはメリットがあるものの現状、建退共との連動も進んでなく、その活用が感じられない。元請会社や下請会社の書類作成業務の削減、例えば施工体制台帳作成の自動化や社会保険確認の効率化など利用方法の拡大を要望。局側は拡大に向け環境整備を急いでいるとした。
提供:滋賀産業新聞