建通新聞社(静岡)
2023/08/09
【静岡】定住外国人を建設業に
静岡県は、県内の外国人労働者の半数以上を占める定住外国人を正社員として雇用するよう、県内の企業に働き掛けている。ブラジルやフィリピンの日系人が多い県内の定住外国人は3万8217人(労働力人口、2022年6月時点)と、県内の外国人労働者全体の56・3%を占めている。派遣や請負で働くケースが多いものの、正社員雇用を望む定住外国人も少なくない。県は、従業員の高齢化や人手不足に悩む建設業や運輸業をターゲットとして、定住外国人の正社員雇用に対する支援事業を展開している。
在留外国人が最も多いのは東京都の56万6525人で、全国の外国人の19・2%を占める。静岡県内の在留外国人は全国で8番目に多い10万2831人。このうち定住外国人は6万9659人で、在留外国人に占める定住外国人の割合は67・7%と全国で最も高い。
新型コロナウイルスの感染拡大後に相次いだ工場の操業停止の影響を受け、これまで県内の製造業で派遣・請負の雇用形態で働いてきた定住外国人が解雇・雇い止めとなった。その一方で、人口減少によって若年人材の採用が難しい県内企業では、年々人手不足感が強まっている。
県は、不安定な雇用形態を抜け出し、正社員雇用を希望する定住外国人と、人手不足に悩む県内企業を結びつける「定住外国人正社員就労促進事業」を2022年度にスタート。この事業では、企業・正社員就労を希望する定住外国人向けのセミナーを開いたり、企業の受け入れ体制や雇用の定着へのアドバイザー支援も行っている。
外国人の就労支援を行っている静岡県国際交流協会とも連携。同協会が定住外国人と企業をマッチングし、県内企業への正社員化も進めている。
県と県国際交流協会は7月に静岡県建設業協会(石井源一会長)を訪れ、協会理事らにこの事業の趣旨や定住外国人の実態を説明。ブラジル日系3世を正社員として雇用した会員企業の事例も紹介した。
建設業の外国人材の活用は、専門工事業が技能実習生や特定技能外国人を技能者として受け入れるケースが一般的だが、技能実習生を受け入れる企業は入国前に送り出し機関などに事前教育や紹介料といった費用を支払う必要がある。21年度に法務省が行った調査では企業が送り出し機関に支払う費用の平均は52万1065円に上るという。
また、技能実習の実習期間は最長5年間で、特定技能に移行しない実習生は入国から5年で帰国しなければならない。親世代から日本に住む定住外国人は、就労の制限もなく、日本人と同様に働くことができ、日本の生活習慣も身に付いている。
ただ、母国のコミュニティで生活を続けてきたために日本語能力が低い定住外国人も多いのが課題だ。
県が県内企業を対象に行った調査でも、定住外国人を雇用する際、「日本語能力」や「コミュニケーション能力」を重視すると回答する企業が目立った。定住外国人を雇用している企業では、外国語表示や日本人社員が外国語であいさつするよう指導するなど、定着に向けて取り組んでいるケースが多いという。