2023年建設事業関係功労者等国土交通大臣表彰に、砺波工業代表取締役社長で富山県建設業協会常任理事の上田信和氏が選ばれた。受賞の感想として、「先輩方が多い中、まだ若い私のような者が頂いて良いのかと思ったが、協会のために今まで何ができたかを振り返る良い機会になった」と捉える。
地域建設業を取り巻く課題には担い手不足を一番に挙げる。「人口が減る中、若手の入職が増えない。建設業の魅力をいかに発信できるかがキーになる」と力を込める。原材料費高騰も問題であり、「経営的に厳しい会社が今後増えると思う。われわれは地域の守り手であり、インフラ整備を担うなくてはならない業種。各地域に存在することが不可欠であり、それが欠けると災害対応や除雪も厳しくなる。目前に迫った時間外労働の上限規制への対応も急務」と指摘する。特に担い手確保に関し、「高校生や大学生だけでなく、小・中学生の時期から地域を挙げて業界をPRしなければ」との危機感を吐露する。
同社では創立75周年を記念し、19年5月に発祥の地・砺波本店の近隣に本社社屋を移転新築した。「建て替えが必要な時期ではあったが、今の若い人たちに気持ち良く働いてもらえる場所と空間を準備したかった。魅力的で存在感のある建物を造ることで、建設業に興味を持つ子どもを増やしたいとの思いもあった」と述べる。
新社屋のオフィス棟に併設し、地域に開かれたコミュニティ棟も整備した。「地域の防災拠点となる対策を施し、地域住民との防災訓練、イベントも開いている。地域になくてはならない企業であることを認識してもらいたかったので、そういう意味では新社屋は貢献している」と語る。また、「弊社も数年前までは新入社員をなかなか確保できなかったが、砺波市に本社を移したことで、市内からの入社が増えつつある。新入社員の親御さんに最新鋭のオフィスを見てもらうことで、離職防止の一助にもつながれば」と願う。
新入社員研修にも注力し、「3カ月のうち、最初の1カ月半は県外の学校で研修を受け、社会人としての知識や建設業で必要な資格を学ぶ。同じ宿舎から通学するが、同期の輪が広がり、すごく仲良くなる」と手応えをつかむ。「弊社では女性技術者の入職も増えてきた。建設業は男社会のイメージだが、女性から良い影響を受けることで、男性も女性には負けられないという相乗効果につながれば」と期待を寄せる。
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うえだ・のぶかず 56歳。金沢大学工学部卒。佐藤工業を経て、2000年砺波工業に入社。04年に取締役営業部長、06年11月から現職。県建設業協会では13年から常任理事。同協会砺波支部副支部長や砺波市建設業協会副会長、県港湾建設協会会長、砺波商工会議所副会頭の要職も務める。砺波市在住。