潟zテルニューアワジ(代表取締役社長木下学氏、兵庫県洲本市小路谷20)は、京都市右京区の旧大渡家住宅(旧鳴滝寮)を活用するため、ホテルに用途変更を行うとともに、増築及び改修を行う。7月頃に工事着手し、令和6年4月頃の完成を予定。
旧鳴滝寮は、昭和14年に京都電燈の重役を務めた大渡光蔵氏の邸宅として建てられた。所在地は京都市右京区宇多野御屋敷町14の敷地面積3158・00u。用途地域は敷地東側の国道162号側が第一種低層住居専用地域で、西側の住宅地側が第一種住居地域。建ぺい率は30%(40%)(風致地区条例による)、容積率は80%(200%)。高度地区は10m高度地区、12m第2種高度地区)。
戦後、京都市が譲り受け、京都市交通局の厚生施設(保養所)として使用してきたが、平成27年に民間に売却。その後は所有者が変遷した。
令和元年に土地及び建物を取得したホテルニューアワジは、旧鳴滝寮を再整備し、保養所からホテルへの用途変更を行う。別棟の倉庫2棟と一部水回りを除却し、ホテルを運営する上で必要となる客室数を確保するため、1棟増築を行う。このほか既存部分の破損・劣化等の修復・更新を行う。
整備方針によると、改修後の国登録有形文化財への登録を前提に、特徴的な南側、東側外観、残された意匠、材料、技法や庭園の保存を図る。屋根の改修は、瓦の破損箇所を修復するとともに、後年に改修された腰葺のガルバリウム鋼板やアスファルトシングルを、創建当時に使用されていた銅板葺に変更し、外観意匠の復元に努める。1階東南角にある洋館の意匠に擬した従業員控室は、和館南側の意匠と調和を図るため、和風の意匠に改修する。
内部は、間仕切り壁の改修などは必要最小限にとどめ、創建当時の平面構成を保存する。意匠性が高く、価値付けの高い室である主座敷、離れ、洋間などは仕上げ部材を含めた保存を基本としつつ、雨漏りや白蟻被害が見られる箇所は、新材で復元する。意匠性が低く、後年の改修が見られる調理室や従業員の控室などは創建当時の部材の保存に配慮しつつ、活用を図る上で必要な機能の整備を行う。
増築棟は、既存棟への影響が少ない北西位置に配置。建物高さを抑えるとともに、既存棟の外観意匠を踏襲したデザインとする。入母屋屋根、日本瓦、聚楽壁等を採用する。増築棟は、新たに増築する渡り廊下で既存棟と接続することで回遊性を持たせ、それぞれの空間を緩やかにつなぐ計画とする。
既存部分はW造2階建、延831・59u(建築面積575・57u)。減築部分は38・64u、増築部分は延474・98u(建築面積268・06u)で合計延1267・93u(建築面積804・99u)となる予定。
ホテルは客室10室(既存部分4室、増築部分6室)。宿泊客のみが利用できる付帯設備として、レストラン、個室レストラン×2室、バー・ラウンジ、茶室、ライブラリーを収容する。
周辺環境への配慮では、西側の住宅地側は開口部を設けない計画とし、更に植栽や目隠し塀(H1・8m)を設置する。既存部分と増築部分の間に空間を設け、視線の抜けを確保する。エレベーターは隣地から離れた位置に設置し、音や振動を低減する。国道162号から直接出入りができる位置に新たに出入口を設けることで、周辺の生活道路に影響を与えない計画とする。
交通に対する配慮では、出入口位置を道路境界からセットバックし、敷地内に敷地北側と東側の横断歩道をつなぐ歩行空間を確保する。
設計はラウムアソシエイツ一級建築士事務所(京都市上京区・075−254−8188)。
当該施設については、京都経済の発展や地域経済の活性化に貢献する宿泊施設を上質宿泊施設として誘致する京都市の上質宿泊施設誘致制度に基づき、上質宿泊施設計画書の提出があり、市が上質宿泊施設候補選定に係る有識者会議で外部有識者の意見を聴取しつつ、計画書の内容を確認。その結果、当該施設を上質宿泊施設候補として選定した。
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なお同社グループホテルの京都初進出の「清水小路 坂のホテル京都」(京都市東山区)は平成29年12月に開業。増築・改修工事の施工はミノベ建設(大津市)。