川崎市は、9月に高炉を休止するJFEスチール東日本製鉄所京浜地区について、土地利用方針案を策定した。先導エリア約70fの南側に水素を軸としたカーボンニュートラルの拠点、北側に高度物流や港湾物流の拠点を導入し、2028年度から一部土地利用開始を目指す。先導エリアの概成は30年度を想定しており、同年度までの官民合わせた概算投資額は4700億円。地区が概成する50年度までには2兆0600億円が投じられる見通しだ。
土地利用の対象範囲は高炉が休止する予定の扇島地区約280fと周辺地区約74f、南渡田地区約52fの約400f。このうち扇島地区は扇島南地区(川崎側)約222f、扇島北地区約57f、周辺地区は池上町約25f、扇町約23f、水江町約26fで構成する。
先導エリアは扇島南地区のうち原料ヤードや大水深バースがある約70fで、南側に大水深バースを活用した「カーボンニュートラルエネルギーゾーン」、北側に「港湾物流・高度物流ゾーン」を配置する。先導エリア以外は高炉や製鋼工場などの構造物が立地しているため、段階的な整備を想定している。
カーボンニュートラルエネルギーゾーンでは、日本水素エネルギー、岩谷産業、ENEOSが水素の商用サプライチェーンの構築を目指し、液化水素の受け入れタンクや港湾施設の導入、周辺の発電所に水素を供給するための配管の整備などについて調査を進める。JERAも同じく発電所への水素などの供給を検討している。
港湾物流・高度物流拠点については、GXやDXを活用した物流拠点の効率化や高付加価値化を目指す。カーボンニュートラル化に向けた高度な物流機能や、水素などの供給拠点から発生した冷熱を活用した倉庫、それらの機能を支える港湾施設などの導入を想定している。
先導エリア以外ではカーボンニュートラルを先導する機能や次世代産業の拠点、空のモビリティの発着場、商業・文化施設などの導入を検討している。同時に、首都圏の防災を支える拠点として活用する考えだ。
先導エリアや幹線道路の予定地に近い箇所から先行して開発が進むと考えられており、次世代産業に関する研究開発や製造施設などの整備を想定している。扇島北地区では、カーボンニュートラルエネルギーや産業支援に関連した施設の導入が見込まれる。
土地利用に当たっては、国道375号の東扇島と扇島をつなぐ橋梁や、首都高速湾岸線の出入り口、扇島内の構内道路などの整備や改修が必要となる。新たな上下水道管や工業用水道管、ガス管、送電線といったインフラの整備も見込まれるため、必要な規模や整備方法について協議していく。
官民合わせた概算投資額は30年度までに4700億円、50年度までに2兆0600億円を試算。このうち、市の事業費は30年度までに210億円、50年度までに2050億円を見込んでいる。
提供:建通新聞社