北海道建設新聞社
2023/06/06
【北海道】旧藤丸百貨店建て替えへ 帯広市の新たな象徴に
ことしの1月31日に閉店した藤丸百貨店の建て替えは、さまざまな背景を踏まえた決断だ。再建を担う新会社の藤丸(本社・帯広)は、新たに3―5階の商業ビルを構想。帯広市中心部の空洞化を防ぐ意味でも、2026年度の再開を目標に掲げた。これまで経済界は「単なる一商業施設の閉店ではない」と口をそろえてきた。それは跡地にも言える。新施設は「変革の柱」となり、起爆剤としての役割が求められる。
現建物の耐震化構想から、大きくかじを切った。同社の村松一樹CEOは「市民の愛着がある。ただ、施設の老朽化などは無視できない」と口にし、難しい判断を迫られた。商業と住居、医療などを含めた複合施設化を模索していたが、事業費の高騰を踏まえ商業に特化させる。
経済合理性より、早期再開を優先させた事情がある。敷地は約5000m²と限られ、複合施設を建設する場合は高層化が必要。事業費は増大し、計画期間も6―8カ年程度を要してしまう。資材価格の先行きは不透明で、空洞化の長期化だけが確実視される。藤丸の屋号を残すためには、記憶の風化を避けたいところ。長期化すればするほど「藤丸の消滅」につながりかねないのだ。
「市内マンション需要には頭打ち感がある」と漏らす経済関係者もいて、複合化の潜在的なリスクは拭いきれなかった。その点、商業に絞ったことで施設はコンパクトになり、ターゲットも明確化。結果的に経済合理性をも得る可能性がある。
建て替えに対して否定的な声は聞こえてこない。22年7月の報道直後こそ建物への愛着を募らせる声もあったが、閉店後は周辺環境や今後の課題の対応に移行。現実を見据えた取り組みに理解を示し、閉店から約4カ月での再開目標の公表は好印象だろう。
帯広市の協力は不可欠だが、米沢則寿市長は静観姿勢を貫いてきた。しかし、ある経済関係者は「近隣の音更町に商業施設が相次いで進出している。逃した魚は大きい」と批判。危機感不足の印象は否めない。藤丸は企業版ふるさと納税の適用などを要請する考えで、米沢市長を中心とする幹部クラスの積極性が命運を握る。
帯広市中心部は、すっかり寂れてしまった。藤丸の再建が起爆剤になるのは紛れもない事実で、周囲を巻き込んだ再開発の追い風になり得る。122年の歩みを終えた藤丸。生まれ変わり帯広の新たな象徴となることが望まれる。