日本工業経済新聞社(群馬)
2023/05/25
【群馬】群建協 働き方改革実現へアンケ 3つの提言・要望示す
群馬県建設業協会(青柳剛会長)は25日、働き方改革実現に関するアンケートの調査結果を公表。協会員が22年度に行た時間外労働について、36協定で定めている年360時間の上限を超る技術者が1割以上となるなど、業界の抱える課題が浮き彫りとなった。青柳会長は「書類作成工期の設定など、柔軟な対応が必要」とコメント。さらに、調査結果を受け◇工期と書類の適正化と書類作成工期の設定◇フロントローディングの推進◇ワークライフバランスの実践と研修−−の3点を提言・要望として挙げた。(4〜5面に調査結果掲載)
調査は発注者別、工事種類別、業務内容別に分類して、技術者個人の時間外勤務の実態を把握するために行われた。
青柳会長は、提言・要望として掲げた『工期と書類の適正化と書類作成工期の設定』について「常に工期を考えながら書類を最適化していく姿勢が大事」と話す。『フロントローディングの推進』は、アンケート調査から業種によっては残業が少ないという状況を踏まえ「段取り良く工事を進めること、そして一つ一つの課題に対して早め早めに受発注者間で問題解決をし、フロントローディングの推進をしっかりと行う」とした。『ワークライフバランスの実践と研修』では「仕事と休む時とのメリハリを付け、生き生きとした働き方を進めることが大事」とし「なおかつ、どういった働き方があり、どんなワークライフバランスがあるのかといったところに対し、建設業協会として研修を展開して周知徹底する」と述べた。また、アンケート結果で国交省の工事に対して360時間以上の時間外労働を行う技術者が半数以上となったことを受け、青柳会長は「書類作成などのスリム化を打ち出し取り組んでいるが、限界がある」とし「書類作成工期を選択制で作るなどといった、柔軟な対応が必要と考える」と述べ、6月2日に行われる関東整備局とのオンライン意見交換会で今回の提言・要望を伝えるとした。
アンケートによると、22年度の1年間で行った時間外労働が、年間の上限である360時間超えると答えた技術者が86人、全体の14・2%にのぼった。発注者別で見ると、国土交通省の工事で残業時間が多い状況で、請け負った技術者の45%以上が360時間を超過した。業種別における年間の時間外労働の割合が最も多いのは農業土木・森林保全工事だった。
繁忙期となる2月期の1カ月間を対象とした残業時間では、全体の10・9%となる86人の技術者が36協定が定める1カ月間の上限である45時間を超過していると回答。年間と同様、国交省の工事が割合的に高い。
これら時間外労働を行った理由は、「発注者向けの書類作成業務」の割合が60・8%と突出して多く、続いて「人員配置が少ない29・2%」、「現場の性格で早出・残業が必要25・5%」と回答している。発注者向け書類の業務量は国交省が多く、次いで市町村という状況。書類業務の中でも国交省は◇工事打合せ簿の作成◇出来形数量計算◇設計図書の照査・確認−が影響。県と市町村は◇出来形数量計算◇写真整理◇出来形管理−の負担が特に大きいと答えている。
時間外労働を減少させるための自由回答では、発注機関の問題として◇発注時期の分散・平準化◇適切な工期設定◇工期を発注者だけでなく、受注者の意見を聞いて決める◇書類の簡素化−などがあがった。一方で受注者の問題では◇複数の技術者の配置◇社内書類の簡素化◇時間外労働減少に伴う給与減額の対策が必要−などの回答があった。
同アンケートは2024年度に迎える労働規制の適用へ向け、建設技術者の時間外労働の実態を様々な視点別に把握することで、働き方改革を進めるため具体的な提案に繋げることを目的として、4月13日〜24日に実施。本部会員269社のうち170社(回答率63・2%)、607人(依頼628人、回答率96・6%)が回答している。回答者は、各社からランダムに選定された技術者5人。技術者が満たない場合は1〜4人を対象とした。なお、22年度に公共工事の施工を担当者が不在の場合は回答を求めていない。