神奈川県県土整備局は、ICT活用工事の試行対象となる工種に新たに「法面工」を追加した。試行要領を2023年度から本格施行。対象は3000万円以上の工事とし、今後案件を絞り込む。
法面工事では、「3次元起工測量」「3次元設計データ作成」「3次元出来形管理等の施工管理」「3次元データの納品」の四つの段階でICT施工技術を活用することを想定。植生工(種子散布、張芝、筋芝、植生シート、植生マット、植生筋、人工張芝、植生基材吹付、客土吹付)・吹付工(コンクリート吹付、モルタル吹付)・吹付法枠工を含む工事で、設計積算額が税込み3000万円以上となる案件が対象となり、県の予算上は58件の工事が該当する。工事を発注する事務所などが試行対象工事を選定し、受注者希望型で行う。試行対象となった場合は、設計図書に特記仕様書を添付して公告する。
受注者がICT活用工事を希望し、完成した場合には工事成績評定に反映。四つの段階全てでICT技術を活用した場合、主任技術評価者が「創意工夫」の項目で「ICT(情報通信技術)を活用した情報化施工を取り入れた工事」として2点加点する。
ICT施工を実施した場合、経費は受注後の設計変更で対応する。変更金額は県の積算要領に基づいて受注者が算定。県が必要経費を負担することで、ICT活用工事のノウハウを県内企業に蓄積させる狙いがある。「IT導入補助金2023」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」など、ハード・ソフト・人材に関する国の補助金制度を利用することも可能だ。
県は17年9月にICT活用工事の実施要領を定め、土工を対象にモデル工事の試行を開始。19年度に舗装工(路盤工)も対象に追加した。当初は工事面積3000平方b以上の工事を対象にしていたが、県では都市化が進み工事自体が少なかったため、19年度に工事面積1000平方bの工事へと対象枠を拡大している。22年12月には舗装工(修繕工)も対象に追加。切削オーバーレイ工が中心となる設計積算額税込み3000万円以上の工事を対象にした。22年度には土工・舗装工(修繕工)・法面工の計15件でICT活用工事を実施。法面工は、例外的に要領施行前に行った災害防除工事が1件のみある。
県内では国が想定するような大規模工事が少なく、ICT活用工事件数が伸び悩んでいた。22年12月に試行を開始した舗装修繕工と合わせて、スケールメリットの出やすい3000万円以上の法面工事を対象にすることで、県内企業の参画を促す考えだ。
提供:建通新聞社