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日本工業経済新聞社(群馬)
2023/05/15

【群馬】砂盃農政部長インタビュー

4月に農政部長となった砂盃徹氏。4月25日に行った独占インタビューで、県の重要な施策の一つである災害レジリエンスbPの実現に向け、「5か年加速化対策」を活用し、「群馬県農業農村整備計画2020」の計画期間内において、全ての防災重点ため池でハザードマップ作成および豪雨・地震対策に対する安全性能調査を完了させたいと力強く語る。「攻めの姿勢で価値観に訴えかけるような農業を」と話す中、各種施策に対する取り組みや考え方などを聞いた。
―就任の抱負や心境についてお聞かせください
砂盃 農政部の職員750人が、やる気と元気が出るような職場にしたいというのが前提にある。
群馬県の農業がここしばらく、豚熱や鳥インフルエンザなどにより守りの印象が強い受け止め方をされている。ここで攻めの施策が打てればと考えている。具体的には、有機農業を始めとした環境負荷低減型、資源循環型の農業など、これから大切にされる価値観に訴えかけられるような農業を目指したい。また、コロナ後の経済がいよいよ動き出すので、農畜産物の輸出にしっかりと取り組んでいきたい。
これらの基盤となるのが農村整備。前向きな農業にマッチするような基盤整備ができればと考えている。
―農業・農村のあり方について
砂盃 農業・農村は、県民生活に不可欠な食料を安定的に供給する機能とともに、その営みを通じて水源のかん養、国土の保全、美しい農村景観の形成などの多面的機能を有している。しかしながら、本県の農業・農村では農業者の高齢化や減少、農地面積の減少、野生鳥獣による農作物被害の増加などに加え、自然災害、豚熱や高病原性鳥インフルエンザの発生、資機材の高騰など新たな課題に直面している。
こうした状況の中、県では「群馬県農業農村振興計画2021−2025」を策定し、「未来に紡ぐ!豊かで成長し続ける農業・農村の確立」を基本目標に掲げ、農業・農村が持つ可能性を最大限に引き出し、持続的に発展できるようにするとともに、未来に向け農業者が元気に躍動し県民誰もが豊かさを享受できるよう、総合的な施策を展開することとしている。また「群馬県みどりの食料システム基本計画」に基づき、環境負荷低減・資源循環型農業を推進することとしており、農業農村整備事業においても、農業水利施設の省エネ化などに取り組んでいく。
―農業生産基盤の強化について考えをお聞かせください
砂盃 施策の中でも生産基盤の強化は、農業の成長産業化に欠かせないもの。本県を代表する高原野菜の産地である嬬恋村や赤城山の西麓地域(昭和村、渋川市赤城町)などは、生産基盤の整備により、農業競争力の強化と特色ある農産物の産地化が進んだ地域となる。近年では、農地中間管理事業を活用し、担い手として民間企業等が参画した明和町の農地整備や、ICT自動給水栓を導入しスマート農業へ対応した館林市の農地整備など、地域の特徴に合った基盤整備も進めている。
―現状を踏まえ、農村の持続的な発展についての取り組みは
砂盃 農業の持続的な発展の基礎である農村については、農村地域の生活環境の整備、防災・減災対策、農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮のための保全活動などを推進し、農村に人が住み続けるための条件整備を進める。さらに、農村の新たな価値を創出し、関係人口の拡大・深化により活性化を図っていく。
―県が掲げている災害レジリエンスbPに向けた方針について
砂盃 「新・群馬県総合計画」において設定した、7つの政策の柱の一つに「災害レジリエンスbPの実現」がある。ここでは、気象変動の影響により激甚化、多発化する自然災害から県民の命や財産を守るための安全を確保する体制確立に向け、2025年までに集中的な取り組みを進めることとしている。農政部では「誰もが安心して暮らせる農村地域の実現に向けた防災・減災対策の強化」を目標に掲げ、農業農村整備事業を着実に実施し、災害レジリエンスを推進していきたい。
特に防災重点ため池199カ所については、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用し、25年度までに、全ての防災重点ため池でハザードマップ作成および豪雨・地震対策に対する安全性能調査を完了させる考えである。併せてハザードマップの作成と地域住民への周知によるソフト対策(減災対策)、豪雨・地震に対する対策工事によるハード対策を一体的に推進し、防災・減災対策のスピード化を図っていきたい。
―防災重点ため池の管理強化についてお聞かせください
砂盃 日ごろからの適正な管理が重要。このため、県では群馬県土地改良事業団体連合会の協力を得て、「ため池サポートセンターぐんま」を22年4月に開設した。「ため池サポートセンターぐんま」では、ため池の管理者等に対し、研修会の実施や日常点検におけるチェックポイント等の指導等を行い、適正な管理が行えるよう体制を整えている。
―こうした中、人手不足が課題となっているが
砂盃 豚熱などの防疫措置に携わった時、自分に何ができるか考え、フォークリフトと車両系建設機械(整地等)の免許を取得した。そこでは建設業に携わる人や倉庫で働く人など、多くの人と触れ合うことができた。見た目以上に重機の操作が難しいことや、安全確保の重要性を学んだ。人材不足といわれている中で、熟練した技術者は一朝一夕に育つわけではない。計画的な人材の確保と育成を考えていかなければと実感した。
―ICT施工などを含む働き方改革の取り組みについて教えてください
砂盃 ICT施工については、一部の工事において試験的に導入しており、施工精度の向上や作業の効率化、現場管理業務の省力化などに効果が出ている。一方で、受注業者の設備投資が高額となることや工事費が割高になるなどの課題があり、課題を整理しながら段階的に導入を進めていく。
また、公共工事の発注機関では19年に「品確法」と「建設業法」、「入契法」のいわゆる「新・担い手3法」の改正を契機に、建設業をより魅力あるものにし、将来の担い手となる若手技術者や女性技術を確保するために、働き方改革が進められている。農政部においても、これまでに週休2日制の導入や熱中症対策、現場事務所の快適化などの現場環境改善に取り組んできた。引き続き、県土整備部や環境森林部とも歩調を合わせ、働き方改革を進めていく。