横浜市環境創造局は、「横浜下水道DX戦略」を国内の公共下水道で初めて策定した。BIM/CIMを活用して水再生センターとポンプ場の3次元モデルを作成し、維持管理や修繕を効率化するとともに、情報共有システム(ASP)と遠隔臨場を工事で導入して、受発注者の作業を省力化する取り組みを盛り込んだ。計画期間は2022〜25年度の4カ年。
既存下水道ストックの老朽化や激甚化する大雨、生産年齢人口の減少などで生じる課題を、デジタル技術を活用した新たなアイデアで解決していく。
戦略では「全体ビジョン」として、これまで蓄積したデータを市民が容易に活用できる体制を整えることにより、「魅力あふれる下水道サービスの提供」を打ち出した。ビジョン実現に向けた重要分野に位置付ける「下水道DX」とDX推進を支える基盤となる「下水道プラットフォーム」も示す。
下水道DXは「ストックマネジメント」と「防災・減災」「循環・脱炭素」の三つ。具体的な取り組みとして「下水道施設へのBIM/CIMの活用」など七つのアクションプランを設定する。
BIM/CIMの活用では、計画期間でモデル化する施設の優先順位などを決め、将来像として水再生センター11施設とポンプ場26施設、汚泥資源化センター2施設の3次元モデルを作成することを示した。
これまでに中部水再生センターと港北水再生センターのモデルを作成した。中部では建具レベルまでモデルを作成しており、港北では建物の躯体を3次元モデル化している。モデルをどこまで詳細に作成するかを本年度に決定する。24年度に全施設のモデル作成に向けたロードマップを作成し、25年度以降に作成を進めていく。
複雑な2次元データを3次元化して、維持管理や改修、再整備で活用し業務の効率化を目指す。
この他のアクションプランとして、排水設備計画確認申請のオンライン化やドローン活用による災害状況把握、主要設備の温室効果ガス排出量の可視化を定める。
〜ASP、遠隔臨場を活用〜
下水道プラットフォームは「戦略推進エンジン」と「建設ICT活用」「創発・共創」の三つ。
このうち、建設ICT活用では、下水道工事でASPと遠隔臨場を積極的に活用していく。これまでの実績はASP導入は0件、遠隔臨場の導入は5件程度。
この他、民間事業者と連携して課題解決を目指す「YOKOHAMA Hack!」の活用などを盛り込んだ。
下水道DX戦略で示したアクションプランとプラットフォームは次の通り。
【DXアクションプラン】
■ストックマネジメントDX
▽排水設備計画確認申請の手続きのオンライン化
▽デジタル技術を活用したマンホール蓋更新の最適化
▽下水道施設へのBIM/CIMの活用
■防災・減災DX
▽雨水管理情報の一元化
▽ドローン活用による災害状況把握
■循環・脱炭素DX
▽ICT・AI制御による高度処理技術の導入
▽主要設備で温室効果ガス排出量の可視化
【下水道プラットフォーム】
■戦略推進のエンジン
▽業務プロセスの改善(BPRの推進)
▽下水道デジタル人材の育成
■建設ICT活用
▽情報共有システムの公共工事への積極活用
▽下水道工事の監督業務におけるリモート立ち会い(遠隔臨場)
■創発・共創
▽「YOKOHAMA Hack!」の活用・共同研究の推進
提供:建通新聞社