■総評
いろいろな建物を初めて訪問することは、とても刺激が多い。そして、設計者・施工者・施主がその建物に込めた想いの強さを感じることは、やはりうれしいことでもある。その上での審査となる。そこには私なりの建築に対する思い・考えがあり、審査基準としている。
現在、私が専ら関わっているのは古い建物、いわゆる歴史的建造物で、多くが木造である。前回の講評にも書かせてもらったが、歴史的建造物には将来も受け継ぐべき多くの考え方や手法があり、「ふくい建築賞」の応募要項の最初にある福井の歴史文化・風土に深く関与している。歴史的建造物といえども、建てられた時には、程度の差はあろうが最先端の考え方や技術が用いられたであろう。その中で、特に仕上げに関係する「納まり」や「割付」が、良きにつけ悪しきにつけ目を留める作品が多かった。これは歴史的建造物特有のものではなく、新築の建物についても同じである。単に見え・見栄えの問題だけでなく、建築を長持ちさせ、材料を効率的に使用することと大きく関係する。それは、最終の仕上がりまでを設計・施工でしっかり確認できているか、使用材料の経年変化を考慮しているか等々に深く関係する。応募作品には住宅が多かったこともあろうが、木造が多くを占めた木造では意識的に真壁と大壁を考えているか否かが特に目を留めた。また、設計の根幹に大きく関わる「建築計画学」関係での疑問が増えてきたことも否めない。
これらの観点は文字のみで表現することは難しいが、これらを念頭に置きながら私なりの審査基準を設けている。もちろん、建築は「ものづくり」であるという姿勢で審査を行っている。
なお、設計者・施工者・施主との信頼関係があって建築賞への応募ができる。このことは建築に携わる技術者として喜ばしい限りである。