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北陸工業新聞社
2023/04/06

【石川】クローズアップいしかわ2023/Vol.12/浦設備を浦環境研究所に/「社会の流れ強く意識」/浦淳氏BIM化対応も加速/建築促え直す好機

 1975年、浦建築研究所(金沢市本多町、浦淳社長)から分社化し、設立された設備設計・監理の浦設備研究所が4月1日付けで「浦環境研究所」(同、浦淳社長)に社名変更した。気候変動に伴う地球環境問題をはじめ、持続可能な開発目標(SDGs)、カーボンニュートラル(CN)といった社会情勢の変化を踏まえたもので、浦社長に改称の狙い、今後の事業展開などを聞いた。
 設立48年での社名変更について、「昨今の環境を巡る様々な問題、持続可能な社会の構築が叫ばれる中、『設備』よりも『環境』という表現、言葉がふさわしく、社会全体の大きな流れとして、これまで以上に環境を強く意識しなければならない」とし、未だ建築設計の附帯的なイメージが払拭できない設備設計だが、「大学教育では環境学部が生まれたりしている。我々もより主体性を持って、若い世代が設備設計の重要性を認識し、やりがいを感じてもらえる場所、受け皿が必要になった」がその理由だ。
 現在、浦建築、環境両研究所のスタッフは総勢51人で、環境研究所は12人に上る。「10年前の倍。設備は更新需要があったり、近年の長寿命化などで業務量が増大している。当社では基本的に設備設計もBIMを使っており、解析用ソフトで熱や空気の流れなどを的確に把握し、それを意匠に反映させていきたい」と強調する。
 建設業界ではコスト縮減や工期遵守の観点からCM、PM方式も急増し、BIMは欠かせない存在になっている。「3次元データのやり取りはもはや当然。設計事務所も働き方改革を踏まえると、その動きを加速せざるを得ない。BIM対応とデータ解析は重要で、その意識づけの社内勉強会を重ねていきたい」と意気込む。
 社名変更に併せ、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)のZEBプランナーを取得した。「建築はデザイン優先という傾向があったが、今、環境をテーマに建築や設計のあり方が次の段階に移行している。社名変更はいいタイミング」と捉え、社内の新たな中長期計画の中で働き方改革も含め、「新しい建築を創造するために事務所がどうあるべきかを若手世代を中心に課題整理をしてもらっている」と環境という言葉が次代の建築を捉え直す機運も醸成しているようだ。

多様性と自然さで/建築と社会をデザインへ

 3月に石川県、県デザインセンターによる「2022年度石川デザイン賞」を個人で受賞した。浦氏が取り組んできた建築や工芸、まちづくりなど一連の活動が評価された。
 浦建築研究所社長に加え、認定NPO法人趣都金澤理事長、ノエチカ代表取締役主宰として金沢に留まらず、能登、加賀と県内全域に活動のフィールドが広がっていった。「2001年度に事務所として受賞しており、それに続く個人受賞であり、本当にうれしい。これまでいろんな活動を支えてくれた皆さんに感謝したい」と笑みがこぼれる。
 近代建築や現代建築のあり方に一石を投じ、建築に工芸を融合させ、ベルリンで開花した工芸建築「ゆらぎの茶室〜忘機庵」の誕生劇も「多様であること、その多様性によって既存の概念に新たな創造的な価値を加えることができた」との思想によるものだ。
 今回の社名変更も「なるべく、自然に流れていくことがいい。そこは大事にしていて、今ならマッチする」と閃いた。常に思考しているのは「物事をどう開放していくか。それが自分のテーマ。『設備』から『環境』に変わるだけで何かが変わる。閉じていたものが開くような、『そうなんだ』という心の持ち様みたいなものが大切」と建築と社会をデザインし続ける建築家の信念が垣間見える。

hokuriku