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建通新聞社(神奈川)
2023/03/28

【神奈川】伊豆湘南道路 ルート帯絞り込みへ議論

 神奈川県と静岡県は、両県境をまたぐ新たな高規格道路として想定されている伊豆湘南道路の「ルート帯」の絞り込みに向け、複数案を設定するための具体の議論に入った。議論の元となる課題として@広域道路ネットワークにおける位置付けの整理A技術的な課題などへの対応Bルート帯想定エリアでの配慮事項の把握―を挙げ、検討を進める。特に技術的な課題については、山や海など急峻で複雑な地形を通るルート帯想定エリアでの地質・地盤リスクが道路の建設に大きく影響すると考えられ、有料道路事業など全体事業費に応じた整備手法などの検討が求められるという。神奈川県では2020年度以降、毎年調査費を予算化しており、23年度もこれら課題を整理する調査を発注し、次回委員会での議論に備える。
 横浜市内で3月24日に開かれた第2回委員会で、21年8月から9月にかけて実施したアンケート調査の結果などを踏まえ、「魅力あふれる圏域を支える広域道路ネットワークの構築」に向けて@災害に強い道路網(防災)A安全で快適な走行環境(安全・安心)B速達性の確保(医療・産業)C定時性の確保(観光・産業)―とした四つの政策目標を設定した上で、複数案の設定に向けた課題を示した。委員長を務める中村英樹名古屋大学教授は「さまざまな課題を抱えている地域」との認識を示しながら、議論を進めた。

〜技術的対応など三つの課題を議論へ〜

 委員からは三つの課題のうち、技術的な課題への対応では「地形が急峻で地質、地盤へのリスクがあり、事業費の増大も想定される」「ハイピアやトンネルの施工が多くなり、安全性を確保しようとなると必ず事業費がかかるだろう」などの意見があり、複雑な地形での工事は技術的にも難しく、安全面でも配慮が必要となると指摘。その上で、「有料道路、整備主体、PFI、国との連携、事業費の増大を見込んで早い段階から議論に加えた方がいい」という考えを共有した。
 また、富士山の噴火などの災害が起きた場合の負荷などを想定した広域道路ネットワークとしての位置付けを明確にすべきという意見や自然環境などへの配慮として「今の時点でアセスを考慮した調査を行ってほしい」との意見もあった。
 事務局からは「いずれも正にこれから検討するべき事項。次回に向けて調査していきたい」と述べた。
 今回は、21年6月30日の初会合から同年8月から9月にかけてのアンケート調査を踏まえ、1年半以上ぶりの2回目の開催となった。神奈川県の西山俊昭道路部長は「(アンケートでは)より広域的で環境に配慮した検討を求める意見があり、検討事項は多い」と各委員に専門的な知見からの意見を求めた。静岡県の曽根裕介道路局長も実現に向けた検討の難しさを認識しながら「委員の皆さんにも現地を見てもらう機会をつくるなど、しっかり調査、検討を進めたい」と話した。
 次回委員会の開催時期は未定としているが、第1回から今回の2回目の開催まで1年半以上たっているのは「期間が空き過ぎている」という認識は事務局としてもあり、調査の進捗にもよるが、できるだけ早期の開催を目指す考えだ。

〜県境つなぐミッシングリンク解消へ〜

 神奈川と静岡の県境は東名高速道路、新東名高速道路という高規格幹線道路があるものの、富士山麓の限られたエリアに集中している。さらに南側には神奈川県側に小田原厚木道路や西湘バイパス、静岡県側に東駿河湾環状道路が通っているものの、県境で分断されている高規格道路の“ミッシングリンク”。伊豆湘南道路は、このミッシングリンクを解消し、観光・防災・医療・産業など多面的な役割を持つ高規格道路として計画。延長は約30`を想定する。
提供:建通新聞社