袖ケ浦市は2月27日、第5回史跡山野貝塚整備基本計画策定委員会を現地および郷土博物館研修室で開催した。国史跡山野貝塚の整備基本計画の策定に向け、現地視察を経て、計画案について議論した。計画案では、2023年度から30年度までの8か年を短期計画とし、公有地化完了部分および公有地化が見込まれる部分の整備を行うこととした。さらに、31年度以降を長期計画に位置付け、未指定地の指定および公有地化が進んだ段階で追加の発掘調査を実施するとともに、短期計画後の状況を踏まえ、本質的価値の顕在化方法やトイレ・駐車場などの便益施設の整備等について検討し、全面的な公開・活用を目指す。
山野貝塚は縄文時代後期〜晩期の遺跡で、馬蹄形貝塚が見られる。00年度に市の文化財、09年度には県史跡に指定。さらに、17年10月13日に国史跡に指定された。
計画の基本理念は「陸と海、そして、過去・現在・未来をつなぐ山野貝塚」。
計画の対象は、貝塚の公有地化範囲約1万8000uを中心に史跡指定された範囲2万1499uおよび、貝塚からおおむね半径2kmの範囲に所在する主要な文化財や施設。
短期計画においては、山野貝塚をエントランスゾーン、体験ゾーン、貝層・高まりゾーン、緑地(貝層・高まり)ゾーン、後期前半遺構展開ゾーン、中央くぼ地ゾーン、修景・植栽ゾーンに区分。
主に徒歩利用者の入り口となる西端と、主に自動車利用者の入り口となる東端をエントランスゾーンに位置付け、史跡案内のほか、休憩施設を設ける。史跡の南西にある平坦な場所を体験活用に用いる体験ゾーンとする。
貝層が確認され、高まりの地形が残る範囲を貝層・高まりゾーンとし、盛り土により晩期の地形・景観を復元。また、緑地(貝層・高まり)ゾーンについては、貝層・高まりゾーンと同様に貝層が確認され、高まりが残っているが、既存のエノキ林を生かした緑地空間として活用する。
貝層の高まりの外側に展開する縄文時代後期前半の遺構群を後期前半遺構展開ゾーンとし、遺構保護に努めるほか、北東の柄鏡形住居跡を含む特徴ある遺構について解説する。
史跡中央部に形成されたくぼ地地形は、縄文時代晩期の中央くぼ地型集落を表現する上で重要な範囲であり、中央くぼ地ゾーンと位置付ける。
史跡北西部は史跡外の樹木によって良好な景観が保たれていることから、修景・植栽ゾーンとし、将来的にも維持されるよう植栽などに用いる。
そのほか、郷土博物館は、史跡現地で見ることができない遺物の展示などにより、理解を補完・深化する場所と設定。
郷土博物館から山野貝塚までの動線および、周辺にある宮ノ越貝塚や真里場古墳群などの遺跡、袖ケ浦公園、ゆりの里などを生かし、山野貝塚や縄文時代への思いをはせる場とする。
駐車場は、角山配水場の入り口に仮設的に設けられている。また、史跡内を横断する市道飯富2号線は車道として維持する。
短期計画のうち、26年度までを短期計画前半に位置付け、小屋やブロック塀など人工物の撤去、樹木の伐採、囲柵の設置、エントランスゾーン・体験ゾーンの整備など早期に実施できる工事を行う。また、中央くぼ地と馬蹄形の高まりの地形復元に向けた発掘調査や植物資源の利用を明らかにするボーリング調査により、整備に必要な情報・基礎資料を蓄積する。
正式な解説板の設置までには、発掘調査成果を基にした基本設計などが必要となり時間を要するため、試行的な意味も含めて簡易的な解説板を設置し、現地で不足する情報を補う。
ガイダンス施設である郷土博物館については、発掘調査の成果を反映した展示の更新を実施するとともに、山野貝塚の時期変遷を示す模型を作成する。
また、解説情報やデジタルコンテンツの内容について検討する。
27年度から30年度までを短期計画後半とし、盛り土造成を行い、晩期の中央くぼ地型集落の景観を復元する。さらに、試行の成果を踏まえた解説板やベンチを設置することで、来訪者の山野貝塚への理解を促し、いこいを与える空間を創出。併せて、山野貝塚、郷土博物館、関連遺跡などへのアクセスのためのサインや周辺の文化財の解説板などを設置し、山野貝塚と周辺文化財の一体化した活用を図る。
博物館については、史跡指定10周年に当たる27年度に特別展を開催。その内容を踏まえ、山野貝塚の理解を深めてもらうための大幅な展示更新を行う。
基本計画策定業務については、ウッドサークルが担当している。今後は、4月と5月の委員会を経て案を固め、6月頃のパブリックコメントを経て、8月をめどに計画を策定する予定。