富山市教育委員会は25日、富山市東岩瀬町地内の旧馬場家住宅で、「富山工業高等学校 馬場家模型製作発表会」を開いた。
冒頭、同市教育委員会生涯学習課文化財係の尾島志保係長(学芸員)が、「今年度の初めに富山工業高校の指導教員である大橋賢一先生から、授業の一環として例年ある課題研究の中で、旧馬場家住宅の模型を製作したいとの申し入れがあった。生徒の皆さんは大変熱心に調査し、素晴らしい模型が完成した。模型製作は教育活動として重要であると同時に、市にとっても文化財の活用方法の一つ。今回の活動を紹介することで、文化財を保存する大切さを伝えることができれば」と開催経緯を説明した。
模型製作者は、建築工学科3年生(軸組模型班)の井澤柊太さん、石尾太一さん、木山優翔さん、白川小百合さん、林賢太郎さん、藤森光雅さんの6人。現地調査や図面作成などを経て、9月から模型製作に着手。授業時間や放課後、冬休みも作業に取り組み、1月までの5カ月に50分の1のスケールで丁寧に完成させた。
発表会では、「馬場はるさんに届け MODEL BABA HOUSE」をテーマに生徒それぞれが説明し、「馬場家は古い歴史があり、模型の作りがいがあると感じ製作を決めた。模型製作を通し、馬場家の魅力や素晴らしさを多くの方に伝えたい、私たちの思いを届けたいという考えで1年間取り組んできた」と解説。
旧馬場家の概要では、「江戸後期から活躍した北前船主・廻船問屋の住宅で、岩瀬五大家の筆頭に挙げられる。現在の建物は明治6年の大火後、以前の部材を用いて建てられ、平成28年8月に国の登録有形文化財となった。建築面積は983平方メートルと東岩瀬町の中でも最大規模の住宅で、長さ30メートルの屋内通路がある。主屋には33畳の大広間があり、前蔵・壱番蔵・弐番蔵・米蔵・西門・西塀も現存し、廻船業が盛んだったころの面影が残っている」と紹介した。
その後、模型製作の過程や手順、苦労した点などを披露。感想・考察として、▽作業効率を上げるため、一人ひとりの適性にあった役割分担で作業を実施した▽庭があるのとないのでは、建物の雰囲気が全く違う▽授業で作る模型よりもはるかに難しく、失敗が多く何度も作り直すほど、思い通りにいかなかった▽どんどん建物ができるわくわく感があり、完成した時の達成感、満足感がすごくあった−と説明した。
見学者からは「模型は日本の文化として貴重な物であり、遺産をアピールする材料にしてほしい」といった意見があった。発表会終了後、尾島係長の案内で、馬場家の解説会も行われた。
発表会はこの日、午前と午後に同様の形でそれぞれ実施。完成した模型は、3月25日まで旧馬場家住宅で展示される。なお、発表テーマにある馬場はるさんは、9代当主道久氏の妻で、旧制富山高等学校設立のために多額の寄附をした人物として知られる。