横浜市水道局は、将来の水需要に合わせた水道施設の最適化で、小雀浄水場の廃止も視野に入れた将来の方向性の検討を進めている。廃止する場合は神奈川県広域水道企業団の水道施設と連携して給水を行う計画。そのために必要な送水管などの整備費と、小雀浄水場を存続させて市が更新を行う場合の事業費とを比較検討し、2023年度中に廃止か、更新かの方向性を示す。併せて小雀浄水場の取水、導水施設を利用する工業用水道の「馬入川系統」をもう一方の「相模湖系統」へ統合することも検討しており、同じく23年度中に方向性を明らかにする。
検討のポイントになるのが、給水安定性の確保。市は、一つの浄水場が停止した場合でも他の浄水場から給水を継続できるよう、1日最大給水量を上回る給水能力(予備力)を保持している。
小雀浄水場を廃止する場合は、40年に取水施設と浄水施設を廃止するとした上で、企業団の綾瀬浄水場や相模原浄水場、西長沢浄水場の増強や、企業団各浄水場から小雀浄水場の配水施設に管路を整備する。存続して更新する場合は、取水から導水、浄水施設までを一連で再整備して、予備力を確保する。
小雀浄水場は、浄水処理能力が1日当たり82万立方bで、横浜市の港南区と旭区、金沢区、港北区、戸塚区、栄区、泉区など南部方面と横須賀市にも給水している。
所在地は戸塚区小雀町2470。敷地面積は23万7905平方b。
〜工水馬入川系統、統合か〜
小雀浄水場の検討に併せて、同浄水場を利用する「馬入川系統」の工業用水道についても、廃止しもう一系統の「相模湖系統」に統合してダウンサイジングするか、更新するかの方向性を検討している。
相模湖系統では、現在、口径1100_の東寺尾送水幹線の再整備を進めており、馬入川系統の口径1200_の馬入配水幹線も今後、更新時期を迎える。ただ、市は将来、工業用水の需要が減少していくと推定しており、相模湖系統の施設のみで必要量をまかなえる可能性がある。
そこで、馬入川系統の施設を更新する場合と、廃止して相模湖系統に統合して、新たな管路を整備する場合とそれぞれについてコストなどを試算し、局内で比較検討を進めている。
相模湖系統は沼本地点で取水した後、主に鶴ケ峰沈殿池へ導水し、鶴見区と神奈川区、西区、保土ケ谷区などの44ユーザーへ、馬入川系統は寒川地点で取水した後、工水小雀沈殿池へ導水し、戸塚区と栄区、中区、磯子区の24ユーザーに給水している。
〜西谷浄水場の再整備進む〜
横浜市内には、川井浄水場と西谷浄水場、小雀浄水場の三つの浄水場がある。06年度に策定した「横浜水道長期ビジョン」で、取水から浄水場までの基幹的な施設を水需要に見合った規模に最適化するとし、「1水源1浄水場」や「自然流下系施設の優先的整備」の方向性を示した。
小雀浄水場は、相模川下流(馬入川)から取水しており、ポンプによる導水に必要なエネルギー消費が大きいことなどから、自然流下系施設の川井浄水場と西谷浄水場の再整備を優先して進めており、川井浄水場は14年に再整備を完了した。
西谷浄水場の再整備は、浄水処理施設の再整備を大成・水ingエンジニアリング・シンフォニアテクノロジー・NJS異業種建設共同企業体が、排水処理施設の再整備を月島機械グループが、相模湖系導水路の再整備を清水・鴻池・中鉢建設共同企業体が進めている。
提供:建通新聞社