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北陸工業新聞社
2023/01/31

【富山】「実現したい素晴らしい提案」/第13回「建築甲子園」審査講評/富工が3回目の全国優勝

 高校生が対象のまちづくり全国コンペである2022年第13回高校生の「建築甲子園」(主催=日本建築士会連合会と都道府県建築士会)で、5年ぶり3回目の全国優勝を果たした富山工業高校建築工学科チーム。
 24日に富山市で来賓を招いた表彰式が盛大に執り行われたほか、27日に開催された第53回「富山県建築文化賞」の表彰式では顕著な業績をたたえ、特別賞が授与された。
 全国優勝したチームの作品名は「奇跡の村の玄関。〜村民と子供たちとの暮らし方〜」。メンバーは選手(生徒)が鈴木千寛さん、鉾井陽天さん、水口晴天さん、吉田直彦さん、和田龍之介さん(いずれも3年生)、監督(教員)の太田明博氏。次回から審査委員長を務める、堀啓二共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授による講評は次の通り(原文のまま)。
 東日本大震災が発生してからはや11年が過ぎようとしています。震災復興が進む中、復興や特に福島第一原子力発電所事故による避難地域の解除に伴い、地元に戻った数多くの住民の生活を支援する施設が建てられました。その多くは震災以前にも数多く作られてきた一つの箱に多くの機能が複合された地区センターのような施設でした。ただでさえ少子高齢化で縮小する地域にはオーバースケールの建物となっているのが現状だと思います。少子高齢化でまちが縮小する現在、地区センターのような施設は地域の方が、目的がなくても気軽に立ち寄れ交流ができる施設であるべきだと思います。そのためには地域の徒歩圏内に地域に溶け込むように設けるか、地域の多くの人が頻繁に利用する場に設けるべきだと私は考えます。地区センターはまさに「まちになじむ空間」がベストです。また、少子高齢化が進む中、いかに若い世代が使いやすく安心して子育てができるかも地区センターの重要な要素です。
 この案の計画地の「舟橋村」は全国最小の村でありながら、若い人の定住者が多く子供人口割合日本一を達成した「奇跡の村」と呼ばれ、その流れを加速するように地区センターのテーマを「子供を見守り育てるプロジェクト」としたのはとても的確です。 
 敷地選定も的確です。駅はまち(村)の玄関であり情報の拠点と言えます。本計画地の「越中舟橋駅」はまち(村)の中心に位置し、近くには小学校があり貸出率日本一の図書館があります。まさに地域の多くの人が頻繁に利用する場=駅に設けられた地区センターで情報の拠点と言えます。
 計画としては全体として少し大きな気もしますが、このセンターの大きな特徴は間伐材を利用した樹木の構造に支えられた駅につながる段々状の半屋外空間です。冬の寒さは気になりますが木にあふれたこの場は、子供の遊びと学びの場・イベントに使用可能なホール・まちのマーケットなど様々な役割を果たし、まさにまち(村)の玄関です。誰でもが気軽に立ち寄れ、そこでのアクティビティが活気あるファサードをつくり、人々を導きます。
 また、様々なアイデアに対するわかりやすいスケッチで表現されたプレゼンポート、線画によるCGで動線と空間を表現しつつ重要な場面で線画がスケッチに替わる動画による表現は見る者を惹きつけるわかりやすいプレゼンテーションでした。
 このようにこれからの地区センターの一つのあり方を示し、それをわかりやすくプレゼデーションしたこの案は、実際に実現したいと感じる素晴らしい提案でした。よって、審査員一同優勝と決定しました。優勝おめでとうございます。

hokuriku