日本建築士会連合会と都道府県建築士会が主催する2022年第13回高校生の「建築甲子園」で、5年ぶり3回目の全国優勝を果たした富山工業高校建築工学科チームに対する表彰式が24日、富山市のサンシップとやまで開催された。
選手を含む同科3年生32人のほか、県建築士会と県、建築業界の関係者らが参加し、全国優勝の快挙をたたえた。
開会にあたり、県建築士会の西野晴仁会長が「富山工業高校は3回目の全国優勝であり、県建築士会としても大変名誉なこと。この快挙が本県の建築文化の振興に大きく寄与し、建築業界や若者に大きな希望と励みになることを大いに期待している。高校の皆様に心から祝意と敬意を表すとともに、今後ますますのご活躍とご健勝を祈念したい」とあいさつ。
主催者を代表し、日本建築士会連合会教育・事業本委員会の竹江文章委員長が大会の応募状況や審査経過を紹介した上で、「多くの方が表彰式に集まり、皆さんの大きな思い出になる。大変良い機会を作っていただき、指導された先生の力もすごいと思う。次回から審査委員長とテーマが変わる。今後もぜひ参加してほしい」と話した。
来賓を代表し、県教育委員会県立学校課の島田育弘指導主事(課長代理)が「富山工業高校の作品は、越中舟橋駅を核とした子どもと大人が集い楽しめる、新たな地域コミュニティー施設となる創造的な提案であり圧巻だった。建築甲子園で得られた知見を活かし、社会に参画しようとする学びの過程は全国に誇れるもの。社会の担い手として素晴らしい人材が育っていることは大変嬉しい」と祝辞を述べた。
審査委員長の片山和俊東京藝術大学名誉教授から、優勝選手(生徒)の鈴木千寛さん、鉾井陽天さん、水口晴天さん、吉田直彦さん、和田龍之介さん(いずれも3年生)と監督(教員)の太田明博氏に表彰状が手渡されたほか、賞金と景品などが贈呈された。西野会長から、県大会優勝の副賞も贈られた。
受賞者を代表し、選手の鈴木さんが「作品は協力いただいた地域住民の方々、先生方の温かい支えがあって完成できた。作品づくりを通して得られた知識や経験を積み重ね、勉学に励み努力したい。今回の評価は私たちにとって大きな励み。本当にありがとうございました」とお礼の言葉を話した。篠原俊一郎校長も謝意を述べた。
続いて、優勝メンバーによる受賞作品「奇跡の村の玄関。〜村民と子供たちとの暮らし方〜」の発表が行われた。
題材となった舟橋村は、北陸3県で唯一残る全国最小の村。若夫婦世代の移住や定住に成功し、子どもの人口割合日本一を達成した「奇跡の村」と呼ばれる。今回は越中舟橋駅を、コロナ禍の子供たちをみんなで育てる地区センターの計画地に設定。既存老朽ホームの改修と駅の環境改善を含めた「子供を見守り育てるプロジェクト」として提案した。
村の玄関にふさわしい場所とすべく、▽ホタルの小川とひな壇教室▽地下の連絡通路のリニューアルによる母親たちのコミュニティートンネル(物々交換のフリーマーケット)▽子供たちの縁側ホーム▽放課後の寺子屋で食育教室−などの仕掛けを考案。説明した選手は「10年、20年後に地区センターで育った子供たちが舟橋村で子供を持ち、その子供が地区センターで育つ循環を創った。コロナ禍以前の生活や遊び方を知らない子供たちを、コロナに負けない強い子供に育てたいという強い気持ちを込めて考えた」と紹介した。
その後、片山審査委員長による審査総評と記念講演も行われた。
建築甲子園は、まちづくりをテーマとした全国設計コンペで、工業高校などの生徒が対象。建築士会単位で審査する県大会予選を勝ち抜き、選抜された1作品が全国大会に参加し優勝を争う。今テーマは、「地域のくらし−これからの地区センター−」。地域コミュニティの核となる地区センターを、現況や従来型にとらわれず、応募者の興味に従って自由に描いてもらった。65校117点の応募があり、県予選を突破した35作品で全国大会が行われた。
なお、27日に開かれる第53回「富山県建築文化賞」表彰式では、今チームに特別賞を授与。2月2日には受賞報告のため、新田八朗知事を表敬訪問する予定。