北海道建設新聞社
2023/01/23
【北海道】栗山町、旧王子の森を活用し「木育の森」
栗山町は、現在民間企業が所有している旧王子の森の約24haを取得し「木育の森」を計画している。市街地近くの立地条件を生かし、宿泊滞在型の森林ワーケーション施設の新築、アスレチックコースを設けた森林公園やキャンプ場整備のほか、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)などの観点で企業から要望の多い森林整備体験ゾーンの設置を想定する。2023年度に用地取得交渉と同時並行しながら、構想策定を目指す。用地取得が順調に進めば、24―25年度に設計と施工を進めたい意向だ。
湯地88の2にある旧王子の森は、24万1424m²の広さ。町の市街地、大型スーパーや温泉にも近く、利便性が高い場所だ。1956年に王子製紙(本社・東京)が林木育種研究所として開設し、その後、森林博物館へ名称変更。保存林を憩いの森として一般開放していたが、10年に閉鎖し、22年に敷地内の建物も解体撤去した。
土地は王子不動産(本社・東京)が所有。カラマツやトドマツなど200種以上の約1万3000本の立木があり、ポンウエンベツ川が流れる。敷地の一部で王子ホールディングス(同)が薬草の試験栽培をしているが、22年に敷地内の森林伐採による畑転用の問い合わせがあったことから、町が取得前提で森林を生かす活用策を検討した。
具体的には、CLT(直交集成材)や町有林などを活用した10―20人程度が宿泊できる森林ワーケーション施設の新築や、木に囲まれてプライベート感が味わえるキャンプ場を整備し、道内外から交流人口や関係人口、関係企業の拡大を図る。施設は未利用町有林を活用したまきやチップを燃料とするボイラを使用し、ゼロカーボンを推進する。
森林公園は、遊具などアクティビティ施設を設置したアスレチックコースを設け、楽しみながら森林空間を満喫。CSRやSDGsの一環で、企業から問い合わせが多い森林整備体験プログラムとして、枝打ちや間伐などの体験ゾーンを設ける。
用地取得に向けては、土地の上乗せ評価とする立木の材積調査を2―3月に実施。新年度早々にも交渉を進める見通しだ。
23年度からスタートする町の第7次総合計画案には、新規の重点プロジェクトとして森林空間の新たな活用を明示。体験プログラムの開発や森林ワーケーション施設の調査設計や施工を盛り込んでいる。地域資源を生かした持続可能な森林空間づくりが始まろうとしている。