日本工業経済新聞社(埼玉)
2023/01/20
【埼玉】国、県、埼建協ら/ICT普及へ連携/共同の現場研修で学び深化
国と県、県内建設事業者らはICT施工の普及促進を目指した連携を一段と強める。ICTのノウハウが豊富な施工者の建設現場を受発注者双方の研修・見学会の場に活用し、リアルに稼働する新技術に触れてもらう活動を2023年も日々継続する。17日には、県内2カ所でICT見学会が開かれた。
関東地方整備局や県が参画する埼玉県地域建設業ICT推進検討協議会は、中小建設業へのICT普及拡大に向け、小規模工事においてICT技術を活用する現場の見学会を開催した。場所は、島村工業が朝霞県土整備事務所から受注した「総T除)1227交付金(改築)工事(志木工区その8)」(志木市中宗岡)。
複数の建設業者のほか、さいたま市、県外から千葉県、横浜市、川崎市の職員が参加。島村工業が、小型ICT建設機械を活用した工事を実演してみせた。
同工事では、バックホウにセンサー類を設置し、杭ナビを通じて3次元(3D)データを管理する「杭ナビショベル」などを用いた施工を進めている。
島村工業の北島正之土木工事部ICT推進グループリーダーは、3Dデータの入力に慣れてくれば、現場の丁張りを省略でき、小規模工事でも活用次第で生産性が高まるだろうとの見解を伝えた。
同協議会には、ICT普及促進のため関東整備局、県、さいたま市、埼玉県建設業協会青年経営者部会が共同参画している。
◇◇◇
杉戸県土整備事務所と埼玉県建設業協会杉戸支部も同日、ICT施工の受発注者合同研修として国土交通省江戸川河川事務所発注の「R3江戸川右岸金杉地先堤防整備工事」(松伏町金杉)を視察した。施工者である金杉建設の技術者が、地上型レーザースキャナーやICT建機、AR(拡張現実)などの導入メリットについて、実演を交えて詳しく解説した。
金杉建設は、関東地方整備局が認定するICTアドバイザー。同社の所在自体は建設業協会越谷支部管内に当たるが、ICT施工のノウハウが豊富な同社の協力に期待した杉戸県土からの要望を快諾し、研修実施に至った。
金杉建設の小俣陽平工事管理本部部長・@-Construction推進室室長は、自社で購入した地上型レーザースキャナーの使用方法などを解説。さらに、GNSS(全球測位衛星システム)で位置情報を取得しながら工事を進めるICT建機、ARなどの実演を通じ、参加者に理解を深めてもらった。
杉戸県土から、ICT施工を内製化するポイントを問われた同社は「まずは、設計を組めるようにするところから始めるのが良いのではないか」と経験を伝えた。
杉戸支部の栗原偉憲副支部長(栗原建設工業社長)は、ICT施工で試行錯誤する会員企業らが研さんを積む機会になったことを感謝。杉戸県土から参加した若手技師2人、裄V知弥さん(道路施設担当)と小川朋夏さん(河川担当)は、発注技術者の立場から、3Dデータの活用などが「工事を見える化する上でも欠かせない工夫だ」と再確認した。
同工事の現場代理人を務める肥沼大介さんは、残りの工程管理に細心の注意を払いつつ、今後もICTアドバイザーの一員として、建設業界の生産性向上に貢献していく思いを話した。