建通新聞社(静岡)
2022/12/19
【静岡】宅地内の土砂撤去 事前の方針決定を指導
静岡県は、災害発生時に土石流が宅地内に流れ込んだ場合に備え、土砂撤去に関する基本方針を事前に定めるよう、県内の市町に呼び掛ける。宅地内の土砂は、原則として土地の所有者が撤去する必要があるが、宅地内に土砂を放置すると2次災害を招く恐れがあるケースなどでは、市町村主体で土砂を撤去できる。県は、市町が事前に方針を定め、早期に土砂を撤去できるよう求める他、建設業団体との災害協定に土砂撤去の取り扱いを定め、迅速な初動対応を促す。
災害復旧では、インフラの復旧が優先され、被災した家屋の復旧は原則として所有者に委ねられるが、家屋や所有する土地が被災した住民やボランティアだけで、土砂を取り除くのは難しい。
復旧の遅れを防ぐため、国土交通省は「堆積土砂排除事業」として、市町村が所有者に代わって土砂を撤去した際の経費を補助している。この事業では、市町村長が指定した仮置き場から処分場に土砂を搬出する場合、事業費の2分の1を国費で負担する。2次災害の恐れがあったり、交通の妨げになる場合は、市町村が宅地から処分場まで土砂を直接搬出することも認めている。
熱海市の土石流災害では、民有地に流れ込んだ土砂を撤去するため、熱海市がこの事業を県内で初めて活用。市が主体となって宅地内に流入した土砂を撤去した。
9月の台風15号でも、道路や河川などのインフラだけでなく、土石流で宅地に土砂が流れ込む被害が発生し、静岡市・袋井市・磐田市が堆積土砂排除事業を活用して宅地内の土砂を撤去した。
県も、国交省が堆積土砂排除事業のポイントなどをまとめた「宅地内からの土砂・がれき撤去の事例ガイド」を市町に周知したものの、今回被害を受けた市町の中には、災害発生前に担当部署や土砂の搬出先を決めず、土砂撤去の初動対応が遅れたケースもあったという。県は、災害発生時に対応の遅れを招かないよう、宅地内の土砂撤去に対応する体制を整えるよう、各市町を指導する。
「災害協定見直しも必要」
宅地内の土砂撤去を巡っては、応急復旧に当たる建設業と市町との連携にも課題がある。静岡県建設業協会(石井源一会長)の調べによると、県内35市町のうち、29市町が結んでいる災害協定で、災害対応の対象を「公共施設」と「公共土木施設」に限定している(21年10月時点)。
災害協定に盛り込まれていない復旧作業は、作業従事者への労災補償が適用されなかったり、支払いが不透明になる恐れがある。県は台風15号の初動対応を検証した上で、災害協定に宅地内の土砂撤去の考え方も盛り込むなど、各市町に建設業団体との協定の見直しも指導していく考えだ。