建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者登録数が10月で100万人の大台を突破した。国は2025年度までに、全ての都道府県と市町村でCCUS活用工事の導入を目指したい考えで、現場の末端まで含めた対応は待ったなし≠フ状況。県内でも「元請けから登録するように求められている」などの声が増えるなど、普及拡大の波は広がりつつある。(田原謙一・常務取締役(兼)報道部長)
10月末現在のCCUS登録数は、全国で技能者が102万4269人、事業者は19万6655社(うち一人親方6万2179)となった。このうち、県内は技能者1万2786人、事業者1985社(同475)。九州・沖縄の8県でみると、技能者は福岡に次いで2番目、事業者は福岡、沖縄に続いて3番目に多い。
県では21年6月から、所定の登録率等をクリアすれば工事成績評定(創意工夫)で0.4点を加点するCCUS活用工事の試行を開始。21年度発注分では54件(9月末現在)の実績があった。22年度からは総合評価落札方式での加点もスタートし、元請け企業が登録済みの場合0.1点、当該工事で運用している場合は0.2点のインセンティブを設定。今後は「格付け上位の企業に限らず、中小規模の企業まで拡大するよう研修等にも力を入れていきたい」としている。
ただ、市町村の動きはまだ鈍い。本紙が9〜10月に行ったアンケートによると、県内で活用工事の試行に踏み切ったのは鹿屋市(総合評価落札方式で加点)のみで、ほか積極的な回答はなかった。導入のタイミングは「地元企業の登録状況を見ながら検討する」といった感が強く、切迫感は伝わってこない。
■下請け足踏み「メリット見えぬ」
県内の下請け業者からはこんな声が目立ち始めた。
「元請けから登録を完了するように求められている」
「登録がなければ入れない現場が増えて困っている」
動きを加速させるためには、「技能者が登録したくなるような短期的、日常的なメリットを示すことが必要」との指摘もある。根幹にある「処遇改善」のメリットはあまりにも中長期的すぎて、現実味がないとの見方だ。
国土交通省は、23年8月14日以降に審査基準日を迎える事業年度から、経営事項審査での評価を開始する。元請け企業が過去1年間に施工した公共と民間の全ての現場で認定システムやカードリーダーを通して技能者の就業履歴蓄積を行っていれば、W評点で最大15点(公共のみの場合10点)を加点する仕組み。併せて、退職金制度(建退共)との連携も大きなポイントになる。
「最終的に(技能者に)賃金を支払うのは事業主。その原資が請負金額にあることを考えると、労務単価の引き上げもまだまだ必要」。
CCUSの導入によって、現場の末端まで処遇改善のメリットを享受できる日はいつになるのか。これからが正念場だ。