「長崎大学と長崎河川国道事務所」 道路巡回カーのドラレコ映像からAIで情報検出 長崎大学大学院工学研究科と国土交通省長崎河川国道事務所は、道路メンテナンスに関する覚書を締結した。国と大学による同様の覚書締結は九州で初めてだという。初弾の協力事例として、ドライブレコーダーの映像をAIで解析し、道路の維持管理に活用するシステムの開発を進める。
8日に長崎大学で行われた調印式で、長崎大学の松田浩工学研究科長はまず、長崎大学が応募した『ICTと商用車プローブデータを活用したAIによる道路維持管理システム』の研究テーマが、国土交通省の2022年度『道路政策の質の向上に資する技術研究開発』に採択されたことに触れ、「この実施に当たり、昨年11月に河川国道事務所と締結した連携・協力協定を生かすことにした」と経緯を説明。その上で「河川国道事務所との連携を強化・推進し、インフラ整備の人材育成と先端技術の社会実装活動を進め、長崎県はもとより日本の活性化に貢献したい」と抱負を語った。
続いて河川国道事務所の金井仁志所長は、「道路の維持管理をいかに効率良くするかは我々にとって大きな課題。協定に基づき、お互いが持つ資源を活用して良いもの構築したい」と発言。また、「今回の覚書は、災害やインフラ老朽化への備えにより地域の豊かで安全で活力に満ちた未来≠フ実現を目指す事務所の使命にも合致する」とし、今後も長期間にわたって協力関係を継続していく姿勢を示した。
覚書に基づく今回の取り組みは、河川国道事務所の道路巡回用パトロールカーに、市販のドライブレコーダーを設置。そこで取得したデジタル画像を使って▽画像分類AIによる道路ひび割れ率の算定法▽物体検出AIによる道路構造物・損傷の検出法▽SfM(Structure from Motion)と3D領域分割AIによる街路樹などの検出法―を開発。
その上で▽ひび割れによる陥没発生の要因分析▽(アスファルト舗装の)ポットホール発生の要因分析▽道路標識、路地樹木などの道路物体検出手法の開発と維持管理方策の提案▽重交通道路の舗装劣化と交通量・速度との因果関係の解析▽舗装工事情報(舗装維持・道路占有工事)の重合せによる有効利用法の提案▽国交省舗装点検要領(国道版)舗装点検記録様式の簡易作成と有効活用―を進め、一元的可視化手法確立による次世代型維持管理計画策定手法≠フ開発を目指す。研究期間は23年度までの2カ年を予定している。
松田科長は、日常的なパトロールでの情報から道路異常を人を極力介さずにAIが判定≠キるシステムを開発することで、▽メンテナンスサイクルを持続的に回す仕組みの構築で、予防保全による舗装の長寿命化とライフサイクルコストの低減▽地方自治体土木分野の人員・予算不足への貢献―を果たしたいとした。