再エネ副産物を有効利用し地域経済活性化にも寄与 鰍ネかはらの陸上養殖場で始動開始式 壱岐市での再生可能エネルギー導入拡大に向けて取り組みが進められてきた『RE水素システム』の始動開始式が7日、鰍ネかはらの陸上養殖場(郷ノ浦町片原触)で行われた。離島での再エネ導入・地域活性化に寄与する先進的な取り組みを紹介する。
同市では、再生可能エネルギーの系統連系可能量に限界がある離島での再エネ導入拡大に向け、2018年に水素・再生可能エネルギー導入ビジョンを策定。19年度から太陽光発電による水素の製造〜貯蔵〜発電の実用化実証実験に着手。ここでは、資源エネルギー庁のエネルギー構造高度化・転換理解促進事業費補助金を活用し、東京大学先端科学技術研究センターとの包括連携協定に基づき、実証事業を推進してきた。
具体的には、建設業だけでなく、幅広い事業を展開している鰍ネかはらと連携し、同社が手掛けるフグの陸上養殖場に再エネ設備(太陽光)と水素蓄電・発電システムを設置。太陽光で養殖場に電力を供給するとともに、その余剰電力で水を電気分解して水素を製造。水素をタンクに貯蔵し、夜間や天候不良時に、この水素で燃料電池による発電を行う。
さらに、水素製造時に発生した酸素を養殖場の飼育水槽の給気に、燃料電池からの排熱を実験水槽の温度調節にそれぞれ活用。システムを構成する各機器の挙動はエネルギーマネジメントシステムで管理し、効率的・効果的なエネルギー利用を目指している。
始動開始式で主催者としてあいさつに立った白川博一壱岐市長は、余剰エネルギーが発生するのは、春季や秋季で、電力需要が高まるのは夏季や冬季とした上で「このような季節的な変動の期間でエネルギーを蓄え、再利用するのに最適な素材として、水素の活用に可能性を見出した」と説明。また、陸上養殖場を実証施設にできたことについて「単なる再生可能エネルギーの利用だけでなく、副産物の酸素や排熱を無駄なく有効利用することで、他に類を見ない独創的な取り組みとなった。さらに、地場産業と連携し、地域経済の活性化にも資することが他に誇れる特徴だ」と、なかはらの中原達夫代表取締役会長はじめ関係者に深く感謝した。
そして、この実証システムによる取り組みが、全国の離島地域での再生可能エネルギー導入拡大のモデルになるとともに、本土地域の脱炭素実現の一助となることを期待した。
壱岐市では、再生可能エネルギーを蓄電池や水素貯蔵と組み合わせて安定的に利用することで、離島での再生可能エネルギーの導入拡大を実現させる考え。さらに、電気だけでなく、酸素や熱も無駄なく使ってシステム効率を最大化する今回の実証成果を、野菜の水耕栽培など他の産業への展開も検討していく。
これらの取り組みにより、再エネの導入以外にも▽生産物のブランディング(付加価値向上)▽産業振興(新たな産業分野の創出)▽雇用創出(地域での雇用の場の創出)▽地域の強靱化(レジリエンス)―といった効果を期待している。