建通新聞社(静岡)
2022/10/14
【静岡】農業水利施設の更新 年間事業費36億円基準に
静岡県は、県が造成した基幹農業水利施設(頭首工、用排水機場、用排水路など)で、アセットマネジメント手法を導入した計画的・効率的な長寿命化対策を講じる。耐用年数を超過した県内の基幹農業水利施設は全体の58%に上っており、明治用水頭首工(愛知県豊田市)の漏水事故を受け、年間事業費36億円を基準として、県内の施設に必要な対策を講じるとした。新技術を導入した更新費の縮減にも取り組む。
県造成の基幹農業水利施設(末端支配面積20f以上の水利施設)は、県内に972件(用排水路施設の延長714`)あり、このうち耐用年数を超過している施設は58%に上る。10年後には全体の8割の施設が耐用年数を超える見通しだという。
今年5月に発生した明治用水頭首工の漏水事故は田植え時期を直撃し、稲作農家の営農に大きな影響を与えた。県内でも老朽化に伴う機能損失や突発事故が発生すると、同様の被害が生じる恐れがあり、アセットマネジメント手法によって維持管理体制を強化する。
県は15年3月に実施方針を策定し、基幹農業水利施設の維持・更新にアセットマネジメント手法を導入している。21年度末時点の試算では、老朽化した施設を全面更新した場合、年間の投資額は最大87億円(累計1817億円)だが、機能保全計画を策定してアセットマネジメント手法を導入すると、投資額は最大77億円(累計1430億円)に圧縮できる。さらに予算を平準化すると、投資額は最大54億円まで縮減できるという。
今回の明治用水頭首工の漏水事故を受け、県は耐用年数が10年以下の農業水利施設で継続的に機能保全計画を策定する他、年間の実施事業費や新規採択事業費を36億円を基準に事業を管理する方針を決めた。施設管理者である市町・土地改良区にも、維持更新のための負担金の積み立てを促す。UAVを活用して機能診断の精度を向上させたり、潤滑油の状態で劣化状況を簡易に診断できる「トライボロジー」も本格的に導入する。