石川県や金沢市、住宅関連団体が出捐(えん)して、1983年に設立された一般財団法人石川県建築住宅センター(金沢市幸町)は、建築・住宅及びまちづくりに関する知識の普及、啓発などを通じ、昭和から平成、令和と時代とともに貢献してきた。7月に照田繁隆理事長が会長に就き、新理事長に畝本秀一氏を迎えた。来年、設立40周年という大きな節目を迎える今、両氏にセンターの使命などを聞いた。
―県庁マンから新理事長に就任したが、これまでのセンターの経緯や歴史を踏まえながら、その役割をどう捉えるか。
畝本氏「元々、石川県住宅センターと建築防災センターを母体としているが、主に石川県や金沢市、特定行政庁などの要請、依頼に基づいて、公益団体として事業を展開してきた歴史がある。すべてと言っていいぐらい、特定行政庁を支援する仕事で成立しており、これまでと同様、県民のために貢献していく姿勢に変わりはない」
―近年、地球環境の変化、気候変動などによる災害の頻発などで県民生活や住宅を取り巻く環境が大きく変化してきている。
畝本氏「2019年の能登半島地震の際もそうだったが、当センターが住宅再建に向けた被災者支援の一翼を担わせてもらった。耐震改修の促進や瑕疵担保責任保険法人からの受託といった従来からの業務はもちろん、新型コロナウイルス感染拡大に直面する今、住宅産業がアフターコロナを見据えて動き出しており、私どもとしても求められる役割が変わってきている。技術革新が進めば進むほど、住宅に関する基準がどんどん変化している。新築だけでなく、既存ストックの活用も含め、より地域や社会の実情に応じた施策の展開が必要になっている。県や特定行政庁などと協力し、そうした課題に対応していきたい」
―7月、畝本新理事長就任に伴い、会長に就いた。
照田氏「新理事長のもと、私は会長というポジションで公益事業を担当しており、公の利益のために物事を成す立場であるということは変わらない」
―県建設業協会や県木造住宅協会、県建築組合連合会などと2000年に設立した、いしかわ21世紀住まいづくり協議会の活動は。
照田氏「間もなく27回目を数える石川県ハウジングスクールをはじめ、かしこい住まいづくり講座、先進地視察、省エネ住宅・建築物整備事業などを実施してきた。国、石川県の受託、補助事業を含め、エコ住宅技術者支援、住宅耐震普及啓発支援なども展開している」
―02年に県建築士事務所協会や建築士会、宅建協会、住宅金融支援機構などを正会員として設立した、いしかわ住宅相談・住情報ネットワークは。
照田氏「住宅に関する様々な問題について窓口や電話で相談を受け、住まいづくり融資助成の案内パンフレットの作成、相談員担当者研修会などを開催しており、全国でも珍しい取り組みを行っている」
―来年はセンター設立40周年を迎えることになるが、住宅産業の課題や家づくりに関する相談は、大きく変化している。
畝本氏「今、住宅業界では地球温暖化防止のため、新しい省エネ基準に伴う法改正があり、次のステップに移行せざるを得ない。センターとしても、その役割をしっかり果たしていきたい」
照田氏「量から質の時代と言われたこともあったが、時代が変化し、新しい技術に関する勉強がどんどん必要になっていて、県民、業界への情報提供が今以上に求められてくる。公益事業としてしっかりとお返したい」
うねもと・しゅういち 1953年生まれ。金沢工大建築学科卒。石川県参事(営繕担当)、土木部参与(建築・営繕担当)などを務めた。今年4月に一般財団法人石川県建築住宅センターに入り、7月から理事長。金沢市在住。
てるた・しげたか 1945年生まれ。早大理工学部建築学科卒。石川県参事(建築・営繕担当)、土木部参与(大規模建築担当)など歴任。2006年、財団法人石川県建築住宅総合センター(当時)の理事長に就任。金沢市在住。