建通新聞社(静岡)
2022/08/31
【静岡】南海トラフ臨時情報 事業継続に備え必要
南海トラフ地震が発生する切迫度が年々高まっている。駿河湾から日向灘沖の広域が震源域となる南海トラフ地震では、想定区域の東側と西側に時間差で地震が発生することも想定される。政府は、後発地震での被害軽減に向け、3年前から「臨時情報」の発表をスタートした。地震が発生し、臨時情報が発表されると、建設企業は従業員や現場の安全を確保するだけでなく、災害協定に基づく応急復旧に備えることも必要だ。あす9月1日の「防災の日」に合わせ、地震への備えを改めて考える。
臨時情報は、南海トラフ地震の想定震源域でマグニチュード6・8以上の地震が発生した際、気象庁が発表する。後発地震によって広域に被害が及ぶ南海トラフ地震の発生に備え、住民、地方自治体、企業に防災対応を促すの狙いだ。
内閣府は、臨時情報が出た場合の防災対応についてガイドラインを定めている。プレート境界でマグニチュード8以上の地震が発生し、臨時情報の中で最も危険度が高い「巨大地震警戒対応」が発表されるケースでは、津波災害などに備え、地方自治体が1週間の住民避難を指示する必要性も指摘している。
ガイドラインでは、企業の防災対応についても触れている。ただ、臨時情報発表後の防災対応は業種によって大きく異なる。
こうしたことを踏まえ、静岡県建設業協会(石井源一会長)は19年11月、建設業の特殊性に考慮した「建設企業における南海トラフ地震臨時情報に対する防災対応ガイドライン」をまとめた。内閣府によると、電力会社などの公益事業者を除けば、業種別に防災対応の方針を定めるケースは珍しいという。
県建協のガイドラインでは、臨時情報が発表され、後発地震発生の危険度が高まった状況で、建設企業はまず、施設・設備の点検、仮設構造物の固定、従業員の避難経路の確認といった備えを再確認し、通常の事業活動の継続に努めるよう求めている。
一方、巨大地震警戒情報が発令され、地方自治体が避難指示を発令した区域では、津波避難が難しい海上・海岸付近の現場は休止。がけ地や高所作業など、地震発生時の安全を確保できない箇所の作業も休止するよう求めている。
さらに、災害協定業務を円滑に実施するため、重機や資機材は津波浸水区域・土砂災害警戒区域など、地震被害が想定される区域外に保管する。重機に使用する燃料も備蓄すべきとした。
ガイドラインでは、南海トラフ地震発生の危険度に応じ、建設業が取り組む具体的な防災対応をタイムライン形式でも例示している。県建協では、「各企業の事業継続計画(BCP)に臨時情報発表後の防災対応を位置付けてほしい」(杉保聡正専務理事)と話している。