建通新聞社(静岡)
2022/08/17
【静岡】CCUS 現場利用は進むのか
建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者登録数が100万人突破を目前に控えている。2019年4月に本格運用されたCCUSは、静岡県内でも技能者2万1494人(6月末時点)が登録。4月から静岡県が総合評価方式と工事成績評定で加点対象とするなど、県内では普及に追い風も吹いている。ただ、「登録はしたが、現場で活用した実績はない」といった声は根強い。現場にカードリーダーが設置されなければ、技能者は就業履歴を蓄積することができない。元請けの現場利用はどうすれば進むのだろうか―。
CCUSでは、積み重ねた経験が適正に評価されず、50代に入ると賃金が頭打ちになる技能者の実態を踏まえ、技能者が保有する資格と、カードリーダーを通じてシステムに蓄積する就業履歴で技能者を評価する。技能者が技能と経験に応じた処遇を得られるようにするのが最終的な目標だ。
6月末時点のCCUSの全国の技能者登録数は92万8418人、事業者登録数は18万0372者(うち5万5909者は一人親方)。月間2〜3万人の技能者登録の実績があることを考えると、年内の技能者登録100万人突破は確実だ。
静岡県内でも、今年4月に技能者登録数が2万人を超え、6月末までに2万1494人となった。同月末の事業者登録数は4795者となり、県内の全許可業者の24・3%が登録したことになる。
技能者登録・事業者登録が進む一方で、実際に現場でカードタッチし、就業履歴を蓄積したことのある技能者は、全国で27万8144人と登録技能者の30%にとどまる。6月単月の就業履歴で見ると、完成工事高100億円以上の元請けの現場の就業履歴が全体の95・2%と、大手企業の現場が大半を占めており、地域の建設業の現場利用をどのように後押しするかが課題だ。
県内の6月の就業履歴数は4万7470回で、技能者1人当たりの就業履歴は月間2・2回に過ぎず、元請けの現場利用が進んでいない。
こうした実態も踏まえ、静岡県の発注工事では、22年度からCCUSを現場で利用した元請けを総合評価落札方式と工事成績評定で加点している。県はすでに入札参加資格審査でも、CCUSの事業者登録を評価しており、他の都道府県と比べても、元請けに対する加点措置は充実している。
一方、23年1月からは、元請けに対する経営事項審査での加点措置も始まる。直近の事業年度に施工した全ての工事で現場登録を済ませ、カードリーダーを設置した元請けのW評点を加点する。全ての民間・公共工事での現場利用で15点、全ての公共工事での現場利用で10点を加点する。
処遇改善が期待できる技能者と比べ、現場利用に費用負担もある元請けはCCUS活用のメリットが見えにくいが、元請け抜きで現場利用はできない。技能者登録100万人の突破を控え、総合評価や経審といった公共工事でのインセンティブは、地域の建設業のマインドにどのような変化をもたらすのだろうか。