京都府は、府立丹後郷土資料館の名誉館長として、京都国立博物館名誉館長(前館長)の佐々木丞平氏を招聘。8日に京都市上京区の京都府庁旧本館で委嘱式を行い、京都府の西脇隆俊知事が佐々木名誉館長に委嘱状を交付した。
京都府教育委員会、文化庁で文化財保護行政に携わり、京都大学教授及び京都大学大学院教授を経て、平成17年から令和3年3月まで京都国立博物館館長を務めた佐々木名誉館長は「丹後郷土資料館、ふるさとミュージアムの名誉館長の委嘱を承りました。いま世界のミュージアム(博物館)の役割は大きく変わりつつある。地域社会の発展のハブ(中心)になる、これがこれからのミュージアムの大きな役割です。海の京都では、自然遺産、文化遺産、文化施設、伝統産業など様々な遺産が点在する。地域社会の発展は、これらがいかに連携して好循環の大きな動きを作るかにかかっている。違ったものが連携する、手をつなぐことは難しいが、地域社会の発展という大きな目的のためには手をつなぐ必要があり、その連携のハブとしてこれからのミュージアムは機能しなくてはならない。ミュージアムはモノを集め保存し展示するという本来の仕事だけでなく、ミュージアムの概念を変えていく意識改革が必要。情報の収集と発信機能は、これからのミュージアムに不可欠であり、海の京都の情報センター的な役割、地域連携のコア施設に生まれ変わる必要がある。大変ではあるが目標は大きく設定し、この目標達成のためにお手伝いしたい」と抱負を述べた。
国宝など常時展示へ
公開承認施設化めざす 西脇知事は「丹後郷土資料館は、国宝の雪舟『天橋立図』で描かれた丹後国分寺があったところにあり、天橋立が一望できる絶好の地にある。丹後郷土資料館を、新型コロナウイルス感染症の克服の思いも込め、丹後の歴史文化の探訪と観光の拠点としたいというコンセプトで再整備を進めたいと考え、佐々木氏に名誉館長に就任していただいた。佐々木氏の今までのご経歴、実績はすごいものであり、ミュージアムのあり方についても様々なお考えをお持ちであり、意識改革が必要だという基本的な考えもお持ちである。ハードとソフト両面から力添えをいただきたい。ハード面でいえば、雪舟『天橋立図』のような本物の文化資料を常時展示できる公開承認施設化というハードルがあるが、それに向けて収蔵のノウハウについてもご協力いただきたい。ソフト面では、もともと資料館であり、地域の資料を発掘、収集し研究、展示することに加え、例えば学芸員の教育など、佐々木氏の全国・世界の関係者とのネットワーク、ノウハウで施設運営を刷新していただきたい。全国に誇れるような施設となるよう期待しています」と述べた。
京都府と京都府教育委員会は、丹後郷土資料館を、丹後の歴史文化探訪・観光の拠点となる「博物館」へリニューアルを進める方針。
開館から50年以上が経過し施設の老朽化が進行。リニューアルに向け実施した耐震診断では現行の耐震基準を満たしていないことが判明したが、重厚感のある現行施設を残存させる方向で、改修を基本に整備を行う。
「海の京都」の歴史・文化・観光拠点となるような魅力向上と機能拡充という地元の期待に応えるため、耐震性の要件等をクリアするだけでなく、人を惹きつけ賑わいを創出するような機能性を兼ね備えた施設にリニューアルする考え。
丹後郷土資料館(宮津市字国分小字天王山611−1)は昭和45年11月に開設。施設概要は展示室と研修室、収蔵庫、事務室等。本館はRC造一部地下1階地上2階建、延1286・68u、附属棟は181・28u(民俗資料収蔵庫92・33u、プレハブ造資料倉庫A39・07u、同B49・88u)。用地面積は2万8367・86u(うち、史跡丹後国分寺跡1万1595u)。敷地内には平成7年に移築復元された京都府指定文化財の旧永島家住宅が建つ。
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なお府は複数の府有施設を対象に令和5年度にZEBの事業化の可能性調査に乗り出す。
建物で消費する年間のエネルギー収支を正味ゼロにするZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を巡っては、令和3年12月策定の「府庁の省エネ・創エネ実行プラン(第2期)」において、今後予定する府有施設の新築・建替・大規模改修では原則ZEB Ready以上を目指すことを盛り込んだ。
令和5年度は、リニューアルで改修する宮津市国分の丹後郷土資料館や、現在の2庁舎(本庁舎…旧舞鶴西警察署、分庁舎…旧舞鶴東警察署)の運用から庁舎を統合し建替える舞鶴警察署など、複数施設を対象にZEB化のFS調査(基礎設計)を実施予定。