県長浜土木事務所は、米原市域を流れる1級河川「天野川」の長岡地先において、洪水を一時的に貯留できる「遊水地」の整備を計画している。今年度は詳細設計を委託し23年度半ばまでかけまとめ、23〜24年度にも取り掛かるとみられる用地取得に係る協議が順調にいけば、25年度以降、築堤や越流堤、吐水口などで構成する遊水地整備について、初弾工事の発注・着工を目指したい考えだ。
22年度に委託(8月1日開札)するのは、「天野川」の上流部、長岡地先の「弥高川」との合流部において、遊水地1ヵ所を整備するための詳細設計を含めた単独河川改良設計業務。委託期間は360日間。遊水地の整備場所は合流部近くの「天野川」「弥高川」と既存の堤防施設に囲われた三角状の農地一帯を想定し、整備規模は、築堤(堤防嵩上げ)L約270b(両岸)、越流堤1基、吐水工(樋門)1基、その他附帯施設一式。
遊水地詳細設計では、現地の支障物を踏まえた堤防、越流堤、吐口の配置および規模、近接構造物との取り付け方法、必要となる地内水路、安全施設(フェンス)等遊水地の本体設計と、越流堤設計、吐口設計、維持管理施設(坂路・階段・管理通路・農耕者用通路)等付帯施設の配置、規模等の検討や仮設構造物の設計と、必要となる堤防開削、築堤および仮締切の構造・撤去等の工事順と施工方法を検討し、最適な施工計画案も策定する。
遊水地を整備する場合、既存の堤防で一部補修が必要とみられる箇所もあり、整備の有無や内容、整備順についても検討し、詳細設計で決定する施工計画案にのっとり整備を進めていく。
「天野川」は、滋賀県・岐阜県県境の霊仙山に端を発し、米原市(旧山東町)を北流、米原市(旧伊吹町)に入って西転し、米原市長岡地先で「弥高川」を合流。その後さらに西流し、「梓川」、「黒田川」等多くの支流を合わせ、米原市旧米原町と旧近江町の境で琵琶湖に流入する1級河川。流域面積は約111・6平方q、幹線流路延長は約19q。
59年の豪雨および伊勢湾台風の大規模被災を契機とした「天野川災害復旧助成事業」で改修を行い、現在の河道が完成したが、国道12号、365号の交通量増加など幹線道路はじめ流域の重要性が高まっており、頻発する浸水被害に対し計画的な整備が必要と治水上の課題に。
県では21年3月に公表した淀川水系・木曽川水系「湖北圏域河川整備計画」で、「天野川」をはじめ「余呉川」「姉川」「高時川」「長浜新川」の計5河川を、緊急性の観点から整備実施を必要とする最上の「Aランク」とし、「天野川」の、「整備実施区間」に河口から米原市柏原までの延長19qを位置づけ。30年に1回程度の降雨で予想される洪水を安全に流下させるよう改修を行う。河道掘削により河積の拡大を図ると共に、上流部に洪水を一時的に貯留する遊水地の整備を盛り込んでいる。
なお、改修等を実施する上で必要な将来河道の設定に向け、河道計画の策定や段階整備について検討する天野川河道計画策定業務を、日水コン滋賀事務所(守山市)に委託(7月12日開札)し、約1年間かけ進める。
提供:滋賀産業新聞