県長浜土木事務所は、米原市域を流れる1級河川「天野川」について、改修等を実施する上で必要な将来河道の設定に向け、河道計画の策定や段階整備について検討する業務を委託した。天野川は21年策定の湖北圏域河川整備計画において今後20年間に延長19qを対象に改修整備を実施する「Aランク」河川に位置付けられており、計画策定後の23年度後半や24年度以降は、次の段階への具体化に着手されるとみられる。
委託したのは、天野川河道計画策定業務(担当コンサル=日水コン)。米原市朝妻筑摩地先他の1級河川天野川について、将来計画の計画流量配分(遊水地あり)に照らし、既往検討で作成した将来計画河道の見直しおよび暫定計画河道の環境評価、事業実施フロー等業務計画書の作成、気候変動を踏まえた代替案検討、暫定計画河道の確認、段階整備検討などを行う。委託期間は約1年間。
「天野川」は、滋賀県・岐阜県県境の霊仙山に端を発し、米原市(旧山東町)を北流、米原市(旧伊吹町)に入って西転し、米原市長岡地先で「弥高川」を合流。その後さらに西流し、「梓川」、「黒田川」等多くの支流を合わせ、米原市旧米原町と旧近江町の境で琵琶湖に流入する。流域面積は約111・6平方q、幹線流路延長は約19qの1級河川。
59年の豪雨で被災者1万4652人、死傷者15人、建物被害2928戸、同年9月の伊勢湾台風では被災者1万7253人、死傷者10人、建物被害3036戸とそれぞれ壊滅的な被害を受け、この出水を契機とした「天野川災害復旧助成事業」により改修を行い、現在の河道となっている。
しかし、現在の天野川流域では、国道12号、365号の交通量増加などで地域の重要性が高まっており、頻発する浸水被害に対して計画的な整備が必要との治水上の課題が挙げられている。
21年3月に県が公表した淀川水系・木曽川水系「湖北圏域河川整備計画」では、「天野川」をはじめ「余呉川」「姉川」「高時川」「長浜新川」の計5河川は、「整備実施区間」「調査検討区間」「整備時期検討区間」を設定し約20年間で計画的に河川整備を図る区間として他の「大川」、「田川」とともに位置付けられた計8河川中、緊急性の観点から整備実施を必要とする最上の「Aランク」に位置づけ。
「天野川」の計画目標は、計画期間に「整備を実施する」とする「整備実施区間」に、河口から米原市柏原までの延長19qを位置づけ。30年に1回程度の降雨により予想される洪水を安全に流下させるよう改修を行う。計画高水雨量は、600立方b/S(近江橋地点)。
流下能力が不足する区間について、河道掘削により河積の拡大を図ると共に、上流部に洪水を一時的に貯留する遊水地を整備する。河積の確保にあたっては、河川の連続性に配慮し、瀬・淵など変化に富んだ河道が維持され、魚類をはじめ多くの生物が生育出来る多様な流れを有する環境の保全・再生に努める。周辺の水利用への影響は関係者と協議の上、適切な対応策を講じる。改修後の川幅は、河口から約1・4q地点で幅約70b、約8q地点で幅約50bを想定。水際・みお筋の保全や環境に配慮した掘削とする。
提供:滋賀産業新聞