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建通新聞社(静岡)
2022/07/06

【静岡】不十分な災害協定 「補償」「精算」に不安

 静岡県建設業協会(石井源一会長)の2021年10月時点の調査によると、県内の全ての市町が建設業団体などと災害協定を結んでいるものの、協定の内容には大きなばらつきがある。2次災害の危険が高い被災地で、建設業は事故に対する補償や支払いに不安を抱えながら復旧作業に当たる。不十分な災害協定の内容を改善し、そうした不安を取り除く必要がある。
 調査結果によると、建設業の復旧作業の対象をインフラに限定している市町がほとんどだ。対象施設を「公共土木施設」とした協定は14市町、「公共施設」は15市町で結ばれている。協定に対象施設の記載がないものも5市町であった。
 人命救助や行方不明者の捜索に当たる自衛隊・警察・消防には私有地に立ち入る権限はあるが、協定だけを根拠に復旧に当たる建設業にその権限はない。ただ、実際の被災地では、行政が根拠のないまま、私有地の災害ごみの撤去などの作業を建設業に指示するケースが多いのだという。
 協定に明確な記載がないと、建設業は精算(支払い)に対する不安を抱えながら作業に当たらざるを得ない。その一方で、対象業務に「人命救助」を盛り込んだ協定を6市町が結んでおり、過剰な業務を協定で求めているケースもある。
 災害復旧の従事者に対する補償も不十分だ。県建協の調査結果によると、労災補償の加入義務を規定している協定は25市町、独自の補償規定がある協定は2市町、加入規定がない協定は7市町で結ばれている。復旧作業時に不可抗力で私有財産に被害を与えた場合の「第3者被害防止義務」の規定を設けた協定も10市町が結んでいる。
 ただ、協定を結んだ企業が十分な補償を受けるためには、一般的な労災上乗せ保険や第3者賠償責任保険では十分でなく、企業負担で特約などに加入する必要があるのだという。

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 熱海市の土石流が発生してから3日で1年がたった。自然災害は、気候変動の影響を受けて激甚化・頻発化しており、いつ、どこで発生してもおかしくはない。熱海市の教訓を風化させないためにも、災害時の建設業の役割をもう1度見つめ直し、建設業が「地域の守り手」として活躍できる環境を整える必要がある。