日本工業経済新聞社(群馬)
2022/06/29
【群馬】県内M&Aは少数 相談件数は増加傾向
中小企業基盤整備機構(東京都港区、豊永厚志理事長)は、2021年度の建設業における企業合併および買収(M&A)成立件数が過去最高の185件となったことを発表した。これを受け、群馬県の建設業におけるM&Aの状況を群馬県事業承継・引継ぎ支援センターに取材を行った。契約件数は少数であるものの、センターへの相談件数は年々増加している。
海外では活発なM&Aだが近年、国内においても活発な動きを見せており、その傾向は成立件数にも表れている。中小企業基盤整備機構のデータによると、全国のM&A成立件数は◇18年度=923件◇19年度=1176件◇20年度=1379件◇21年度=1514件−となっており、増加傾向が伺える。
21年度の全産業におけるM&A成立件数はトップの東京都85件を筆頭に、大阪府70件、愛知県66件と続いている。群馬県は19件となり全国で37位。
全国の建設産業におけるM&A成立件数は◇18年度=129件◇19年度=131◇20年度=183件◇21年度=185件―で、他産業と同様に右肩上がりの数字を示していることが分かる。一方で、県内の建設産業におけるM&A成立件数は、20年度のゼロ件を除き18〜21年度まで1件という状況。数字だけ見ると少なく感じるものの、全国の成立件数が185件だったことを考えると妥当な件数だとも考えられる。しかし、増加傾向を読み解くまでには至らない。
そこで、M&Aに限らず事業承継・引継ぎ支援センターに相談があった件数に目を向けてみる。
全国の全産業における相談件数は右肩上がりで◇18年度=1万1477件◇19年度=1万1514件◇20年度=1万1686件◇21年度=2万841件−と、過去最高の数値となっている。最も多く相談が寄せられたのが静岡県の1410件。続いて大阪府1972件、東京都1002件となる。群馬県は362件で25番目という状況。
全国の建設産業における相談件数は◇18年=1552件◇19年度=1508件◇20年度=1616件◇21年度=3125件−と、21年度が大幅に伸びている。群馬県でも◇18年度=17件◇19年度=17件◇20年度=43件◇21年度=66件−と増加している。
以前はM&Aは良いイメージが持たれていなかったが、群馬県事業承継・引継ぎ支援センターは「県内でもM&Aに対する印象は変わってきている」と話す。最近では「当事者同士が取引条件を決めたうえで、契約手続をサポートしてほしい」というようなケースも増えており、M&Aは既に中小企業の経営戦略として一般化しつつあるようだ。
相談件数が増加する一方、成立件数がさほど増加していない理由として「一口に建設業といっても各社の規模や事業内容は百社百様。一見マッチしそうであっても、合併によるシナジー効果が見込めない限り、M&A成立には至らない」と同センターは分析する。
古民家再生など、特徴のある企業が買収対象となった成功事例を見ると「今後、県内建設業においてM&Aの動きが加速化する可能性があるならば、技術の高い小規模な工務店などの買収を行える、戦略的な買い手の存在がカギになる」と分析。売り手側の企業に特徴がない場合は、M&Aによるシナジー効果への期待が希薄となるため、買い手からの需要が生まれにくい。異業種から新たに建設産業に参入する、などといった場合にもメリットが大きく「買い手のニーズにマッチした売り手が存在するか、というのも重要なポイントとなる」と見解を示した。
群馬県事業承継・引継ぎ支援センターでは、M&Aなどに対する相談は増えていくと見込んでおり「当センターは国の設置した公的機関。M&Aだけでなく、親族内で事業承継するケースも含めて、悩みがある方は安心して利用してほしい。さまざまな支援実績を踏まえてお役に立つ情報提供ができるので、まずは気軽に相談してもらいたい」と呼び掛けた。