金沢市の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館(寺町5丁目)の第5回企画展「木で創る―その蓄積と展開」が25日に開幕した。古来から日本を支えてきた伝統建築と、今あらためて注目を集める新しい木造建築の展示を通じ、「木」の建築の魅力と可能性を紹介している。会期は11月27日まで。
金沢は戦災や震災などに遭うことなく、伝統の木使いを保存継承してきた結果、多様な木造建築や木工文化が残る数少ない都市。現在、その蓄積を活かしながら新木造の技術も導入し、さらに重層的な「木の文化都市」を目指している。
会場には、縄文時代から現代までの木造建築にまつわる模型や写真を時代ごとに展示し、木が建築資材として活用されてきた歴史を紹介。展示作品はチカモリ遺跡柱根の実物や正福寺地蔵堂、東大寺南大門、光浄院客殿、金沢エムビル、鼓門、大館樹海ドーム、W350計画の模型、木質ハイブリッド耐火集成材、純木造の耐火集成材(CLT)の見本など。入口には妙成寺五重塔の特大断面図や全国14カ所の有名な杉板材も飾られた。
24日に開かれた内覧会で、水野一郎館長は「今回はこれまでの作品展とは異なり、市が目指す木の文化都市を応援しようというもの。金沢に残る伝統木造を継承し、新たな木造も取り入れ、次の世代に築いていく展覧会にしたい」とあいさつ。
宮下智裕実行委員長(金沢工業大学准教授)は「木造文化の蓄積と展開が街の中で共存し、互いに輝きを増すような都市になればいい。木の魅力や歴史、可能性を少しでも感じてもらい、それぞれの中における木の文化都市を描いてほしい」と企画展に込めた思いを語り、村山卓市長も「ぜひ多くの人に見てもらいたい」とPRした。
内覧会には協賛企業や友の会の会員らが参加し、宮下委員長と同大の山崎幹泰教授から各作品の特長などを聞いた。