京都市は24日、中央卸売市場第一市場「新青果棟」整備の基本設計をまとめ、明らかにした。
安井建築設計事務所(大阪市中央区)がまとめた基本設計によると、新青果棟は下京区朱雀の現青果3・4号棟等の場所(北は五条通、南は花屋町通、東はJR嵯峨野線の高架橋に接し、南北に細長い敷地)に建物を重層化して整備することで、各機能の集約化と市場敷地のコンパクト化を図る。
建物はS造5階建、延約8万3800u(建築面積約2万8200u)で、建物高さは約25・5m。
1階に卸売場(荷置場、遠地・果実せり場)、常温卸売場、低温卸売場、入荷バースなど、2階に卸売場(近郷せり場)、仲卸店舗(遠地・果実)、仲卸店舗(近郷)、出荷バースなどを配置。3階に仲卸売場(仲卸事務所)、見学エリア、4階に仲卸売場(荷置場・冷蔵庫・加工場)、買出人駐車場、5階に場内事業者駐車場を配置。5階の屋上には太陽光発電設備を可能な限り整備する。
主な機能面積を比べると、現状は@卸売場約1万4400u、A仲卸売場約1万9400u、新青果棟基本設計では@卸売場約1万3800u、A仲卸売場約1万6700uに加え、B入出荷バース約7600u(入荷バースは10tトラックが14台駐車可能、出荷バースは4tトラックが後方付けで駐車可能)C貨物・一般車両用スロープ約1万6400uDプロムナード(南の七条通のエントランスホールから北の五条通のエントランスホールをつなぐ屋根付き屋外歩行空間。新水産棟に整備中の屋上プロムナードと接続する)約1300uE見学エリア約100uを予定。
主な特徴は、外壁で覆われた閉鎖型施設とし、間仕切り壁やシートシャッター、エアカーテンで区切り、外気や小動物等の食品の安全に係るリスク要因を可能な限り排除。施設内の温度管理を徹底し、入荷から出荷までのコールドチェーンを確立する。
青果部と水産物部の物流動線を明確に分離するとともに、場内通路の原則一方通行化を行う。入出荷バースは卸売場との段差を設けず、フォークリフトなどの往来ができるようにする。自動化設備の導入等による将来的な改修にも柔軟に対応できるよう、汎用性・可変性の高い施設とする。
買出人や来場者を迎えるエントランスホールは、内装材に市内産木材を使用し温かみのある空間とする。見学エリアや、回遊できるプロムナードを設置する。新水産棟見学エリアや「京の食文化ミュージアムあじわい館」とも連携、中央市場の役割や機能等を広く知ってもらうことができる施設とする。
現在整備中の新水産棟と同様、新青果棟も非常用発電や太陽光発電設備を設置し、停電時に備えるとともに、新水産棟の地下水処理設備を相互に有効活用し、断水時における業務の継続を確保する。
震度6〜7程度の地震に対しても、倒壊または崩壊する危険性が低いと認められる耐震性能の1・25倍の基準を確保する。
BEMS(ビル・エネルギー管理システム)、LEDライト、高効率機器の採用等により、環境負荷を最大限低減し、市場の省エネ化・省コスト化を進める。
壁面に変化を持たせることで、圧迫感を持たせない外観とする。
概算工事費は約300億円を見込む。
今後は、令和4年度に実施設計を完了させ、5年度から整備工事に着手。7年度に第1期工事を完了させ、10年度に第2期工事を完了させる予定。
◇
また市は、新水産棟見学エリアの展示内容を固め、明らかにした。
全長約260mの通路を卸売場に沿って新水産棟西側2階に設け、市場の営業・物流動線とは完全に分離し、見学者の安全と食の衛生管理基準を確保する。
東側に大きく視界の広がる窓を設置するとともに、活気ある現場の音声をスピーカーから流すことで、臨場感のあるせり場の様子を体感できるようにする。
大画面のスクリーンを設置し、映像と音声で中央市場のイメージをダイジェストで表現する。ビニールカーテンで仕切り、冷風を供給し、せり場にいるような疑似体験ができるエリアも設ける。市場内の運搬車に乗って場内を巡るツアーや写真スポットも設置。京都府とも連携し、物販・商談スペースの設置について検討を進めている。
展示整備費は1億4900万円(税込)を予定。展示整備業務受託者は丹青社関西支店(大阪市北区)。
今後は、令和4年度に新水産棟第2期エリア(塩干)部門の工事完了、5年度に新水産棟見学エリアの供用開始を予定。