建設新聞社
2022/06/14
【東北・福島】浪江町が駅周辺整備基本計画の概要発表
福島県浪江町は12日、浪江駅周辺グランドデザイン基本計画の住民・メディア説明会を秋桜アリーナで開催し、基本計画を作成した隈研吾建築都市設計事務所の隈研吾氏らが交流、居住、商業の各機能を有する総延床面積1万1900平方bの施設群について概要を明らかにし、2027年3月の完成を目指すとした。
東日本大震災および原子力発電所事故に伴う避難指示の解除(一部地域を除く)から約5年が経過した同町では、産業団地整備などの復興事業が進展している。しかし居住人口が避難指示前の1割程度にとどまっており、交流人口増加や中心市街地再生などが急務となっている。
今回の事業は、中心市街地である浪江町権現堂地内の約8・4fを対象に、街区再編や道路整備を行い、交流、居住、商業の各機能を有する施設群を一体的に配置するもの。昨年3月に事業計画を策定し、同年9月に隈研吾建築都市設計事務所、伊東順二事務所(東京都世田谷区)、住友商事と「デザインの力による浪江町の復興まちづくりに関する連携協定」を締結。設計や空間デザイン、水素など再生可能エネルギーの利活用の検討を進めてきた。
グランドデザインは、木造と水素を繋ぐことをテーマに福島高度集成材製造センターで生産された集成材を多用し、温かみとなつかしさのある建物を整備するほか、福島水素エネルギー研究フィールドで生産された水素の地産地消などを実現する。
メーン構造物として、駅から商業施設までひと続きにつながる大屋根が特徴の「なみえルーフ」を整備。浪江町の求心力と発信力を併せ持つ、シンボリックなデザインとする。建物はすべてW造(一部RC造含む)とし、3〜5階建て、延べ約7700平方b(115戸程度)の公営住宅3棟・民間住宅2棟や、平屋建て、延べ約2600平方bのスーパーマーケットをキーテナントとした商業施設、2階建て、延べ約1600平方bのコワーキングスペースを有する交流施設を整備するほか、浪江駅の改築や水素ステーションの設置なども検討している。また、浪江駅前の東西自由通路やロータリー、防災機能を有する芝生広場の整備も予定している。
基盤整備は、オオバで実施設計を進めており、用地買収が完了した箇所から造成や道路整備に着工する。建築物の整備スケジュールは、公営住宅が6月に隈研吾建築都市設計事務所に基本設計を委託し、23年度に実施設計、24年度着工。交流施設は23年度に同社に基本設計を委託し、24年度実施設計、25年度着工。商業施設は、町または運営事業者による整備を検討中で、23年度基本設計、24年度実施設計、25年度着工とする。東西自由通路・駅舎はJR側で設計を23〜24年度に行い、25年度着工。民間住宅も運営事業者側で設計・施工を進める。
いずれも隈研吾建築都市設計事務所のデザイン監修を受ける。全体完成は27年3月を予定。
総事業費は約175億(用地買収・基盤整備約125億、建物約50億)とし、福島再生加速化交付金などの補助金を活用する。
説明会には、隈氏をはじめ、伊東順二事務所兼東京藝術大学特任教授の伊東順二氏、住友商事の近藤真史エネルギーイノベーション・イニシアチブ水素事業部第一チーム長が出席。隈氏は「木造と水素を2本柱に、世界でも例のない駅を起点としたまちづくりで、浪江町に戻ってきたいというきっかけになるようにしたい」と意気込んだ。
提供:建設新聞社