3月に行われた金沢市長選で、3年間の副市長の実績を訴え初当選した村山卓氏。市政のテーマを自身の趣味であるフルート演奏のハーモニー(音の重なり)になぞらえ、「親和力で奏でる金沢」と表現。いろんな人と意見を重ねながら、まちの魅力を次の世代につなげていきたいと話す。村山市長に初インタビューし、まちづくりへの思いを聞いた。
ウィズコロナ時代、どのような方針で市政を進めていきますか。
「コロナ後は世の中の価値観が大きく変っていくと思っている。デジタル化が進む一方で、心の豊かさを大事にしていくような。その新しい価値観に合わせた市政を今から考えていかなければならない。金沢には心の豊かさに必要な要素である文化がたくさんあり、それを活かすような政策を進めていきたい」
人口減少社会で市の人口が長らく維持していた46万人を割り込む勢いですが、定住対策についてどのようにお考えですか。
「金沢にしかできない子育て政策などを考えていきたい。金沢の大学を卒業した学生が金沢に住みたい、子育てしたい、墓を買いたいとなっていけばいい。この循環をつくるために大事なのはやはり文化だと考える」
市は近年、金沢美術工芸大学移転や市民サッカー場再整備などの大型プロジェクトに着手しましたが、ハード政策に対するお考えを。
「出馬を決めてから選挙まで1カ月という短い期間だったので、新たな施設を建設するような目玉事業は考えていなかった。一方で、今ある施設の多くが建築から40年〜50年を経過しており、これらを建て替える際には、これからの社会ニーズを踏まえ、機能をより高度化していく必要があると考えている」
懸案事項の日銀金沢支店移転後跡地、旧都ホテル跡地の活用に関しては。
「日銀跡地は市としても主体的に関わっていくと申し上げている。都心軸の重要な場所に位置し、ビジネス街と商業地の結節点でもある。公共あるいは民間でどういう利用がふさわしいのか、いろんな方々の意見を聞きながら考えていきたい。金沢歌劇座の建て替え候補地としての検討も含めて議論していくことになる」
「都ホテル跡地は石川、金沢の玄関口にある大事な土地と言っても過言ではない。このような土地が有効に活用されていないのは資産としてもったいない。所有者の意向を聞きながら、必ずしも公共だけの話ではなく、民間の動きにも注視していきたい。県も強く関心を持っていると思うので、一緒に働き掛けができればいい」
市は2017年、コンベンション施設の立地について議論しました。都市間競争に勝ち残るためには唯一無二のツールが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
「学会などMICEの受け皿は今のところ満たしていると思っている。スポーツや音楽などの興業については、5000人規模の大きな集客施設がないことは確かに課題。これを公共もしくは民間でやるのかという部分もあり、民間の動きを見ながら進めていくことになる」
「痛感しているのは市民の文化を愛する心が強いこと。これは市の財産であり、大きな強み。この心は何百年もかけてつくられたもの。これから心の豊かさが大事になる世の中で、より多くの人にそれを感じてもらいたい。文化を活かしていくことが市長として果たすべき任務だと思っている」
建設業界に向けてメッセージをお願いします。
「金沢市は一定以上の公共事業を確保しなければならないと認識している。地域経済の発展はもちろん、冬期の除雪や災害時など、住民の生活環境を守るためにも建設業界の力は欠かせない。施設の建て替えやゼロカーボンシティを目指す意味でも、皆さんの知恵を借りながら事業を進めていきたい。いま建設業界で懸念されることは原油や資材の高騰だと思う。こうしたことで心配をかけないような手当てを行っていきたい。国の対策も注視し、なるべく速やかに対応していきたい」
むらやま・たかし 慶応大総合政策学部卒。1996年に自治省入省。総務省大臣官房総務課長補佐、防衛省日米防衛協力課日米同盟調整企画官などを歴任し、2019年4月に金沢市副市長に就任。3月の市長選に立候補し、初当選を果たした。49歳。