建通新聞社(神奈川)
2022/06/01
【神奈川】横浜市 新たな中期計画の基本的方向
横浜市は策定を進めている新たな中期計画の基本的方向として、「すべての子どもたちの未来を創るまちづくり」など中長期的な九つの戦略と、重点的に推進すべき「大規模地震への対策」や「生活や経済を支える交通ネットワーク」など38の政策を明らかにした。公共施設の保全更新では▽公共建築物の将来を見通した計画的な保全更新の推進▽時代に即した公共事業の適正な発注と担い手の育成―などを盛り込んだ。2040年に目指す都市像は『明日をひらく都市』。現在策定中の「財政ビジョン」を土台に、「行政運営の基本方針」(策定中)とともに明るい横浜づくり≠フ方向性を示す。
5月31日の市会政策・総務・財政委員会で基本的方向を報告した。
中期計画の計画期間は22〜25年度の4年間。今後基本的方向に対する市民意見を聞き、9月ごろ「素案」を策定する。パブリックコメントを経て12月をめどに「原案」をまとめ、市会に提出する。
財政ビジョンを土台にして中期計画を策定することについて、委員会では「財政均衡のために事業予算が削られるのでは」との懸念が示された。
これに対し伊地知英弘副市長は「財政ビジョンは将来の市民≠フための政策で、中期計画は現在の市民≠フため。将来の市民は今、何も言うことができず、今の状況下では今の市民の要望の方が強い。中期計画で進めることは誰もが賛成する」とし、「それでは将来の市民のためには誰が考えるのか」と問い掛けた。その上で「将来の市民のためには、財政ビジョンで中長期的な視野の中で市政を見る必要があり、財政ビジョンと中期計画は均衡しなくてはならない。従来通りの市政運営では(財政に)赤信号が灯るのは明らか。何らかの歯止めや政策の転換が必要だ」との考えを示し、「将来の市民のための計画が財政ビジョンであり、土台である」と財務・総務・政策各局の連携を説明した。
38の政策のうち、建設関連の主な取り組みは次の通り。
■2 乳幼児期から学齢期までの子ども・子育て支援
▽保育・幼児教育の場の確保(待機児童の解消など)
▽放課後の居場所づくり(放課後キッズクラブ、放課後児童クラブなど)など
■5 未来を創る子どもを育む教育の推進
▽より多くの生徒への中学校給食の提供など
■6 魅力ある学校づくりと豊かな学びの環境の実現
▽安全・安心でより良い教育環境の整備(計画的な学校建て替えの推進など)
▽市民の豊かな学びの環境の充実(図書館の在り方の検討など)など
■8 スポーツで育む地域と暮らし
▽大規模スポーツイベントの誘致・開催など
■16 地域で最後まで安心して暮らせる在宅医療・介護などの推進
▽市営斎場・市営墓地の整備など
■17 医療提供体制の充実・強化
▽医療提供体制の確保・連携体制構築支援(地域中核病院の再整備に向けた支援など)
■18 脱炭素社会の推進
▽脱炭素化と市内経済の持続的な成長の促進(市内事業者の脱炭素化の支援など)
▽再生可能エネルギー導入の促進
▽住宅・建築物の省エネ化の推進など
■19 持続可能な資源循環の推進
▽「ZeroCarbonYokohama」の実現に向けた環境にやさしいエネルギーの創出と脱炭素化の推進
■22 観光・MICE振興による国際観光都市の形成・発信
▽持続可能な観光・MICE推進体制の構築と観光・MICE産業の活性化
▽魅力あふれる観光コンテンツの創出(新たな魅力づくりや高付加価値コンテンツの創出など)
▽グローバルMICE都市としての競争力強化と魅力向上など
■23 大学と連携した地域社会づくり
▽大学・地域・行政の連携による地域の課題解決やまちづくり
▽市内企業と連携した人材育成・確保(横浜産業の魅力紹介など)
▽横浜市立大学の知的資源・研究成果をいかしたさらなる地域貢献など
■24 国際ビジネスの推進による市内経済の活性化及び地球規模課題の解決
▽横浜市の強みをいかした海外インフラビジネスの推進
▽市内企業の海外展開支援(海外販路開拓やマッチングの支援など)
▽外国企業の進出・定着支援(市内企業・機関とのネットワーキング促進など)など
■26 人を惹きつける魅力的な郊外部のまちづくり
▽鉄道駅周辺のまちづくりの推進・戦略的な土地利用の誘導・推進
▽国際園芸博覧会の開催に向けた取り組みの推進
▽郊外部における新たな活性化拠点の形成(旧上瀬谷通信施設など)など
■27 豊かで暮らしやすい住まい・環境づくり
▽多様な住まい方や働き方が可能となるゆとりある住まいや住環境の創出
▽重層的な住宅セーフティネットの充実(居住支援協議会を核とした支援など)
▽総合的な空家等対策の推進(居住中の世帯への普及啓発や空家活用のマッチングなど)など
■28 日常生活を支える地域交通と移動環境の確保
▽市民・企業・交通事業者・行政などみんなで支える地域交通の実現
▽地域における持続可能な交通サービスの確保(身近な移動手段の確保、敬老パスなど)
▽人にやさしい移動環境の確保(通学路の安全対策など)など
■29 魅力と活力あふれる都心部・臨海部の機能強化
▽横浜駅・みなとみらい・東神奈川臨海部周辺のまちづくりの推進
▽関内・関外地区の活性化推進・山下ふ頭再開発の推進
▽新横浜都心や京浜臨海部のまちづくりの推進など
■31 多様なライフスタイルを支える自然豊かな都市環境の充実
▽ガーデンシティ横浜のさらなる推進
▽魅力ある公園の新設・再整備及び管理運営(Park―PFIを含む公募型事業などの推進など)
▽まとまりのある樹林地の保全・活用など
■32 活力ある都市農業の展開
▽横浜の農業を支える多様な担い手に対する支援(農福連携の推進など)
▽農業生産の基盤となる農地の利用促進(農地の貸し借りの促進など)
▽「横浜農場」の展開による地産地消の推進など
■33 大規模地震への対策
▽地震火災対策の推進(木造密集市街地の延焼危険性の改善など)
▽建築物の耐震化などによる安全の確保
▽都市インフラ耐震化の推進など
■34 激甚化する風水害への対策
▽氾濫をできるだけ防ぐための対策の推進(河川改修、雨水幹線の整備など)
▽浸水被害を減少させるまちづくりの推進(グリーンインフラの活用など)
■35 災害から命を守るための地域防災力向上
▽消防団の充実強化(消防団事務のデジタル化など)など
■36 生活や経済を支える交通ネットワーク
▽横浜環状道路などの整備推進
▽都市計画道路の整備
▽鉄道ネットワークの整備推進など
■37 総合港湾づくり
▽ふ頭機能の再編・強化の推進(岸壁の延伸・改良など)
▽クルーズ旅客の受入環境整備(回遊性の向上など)
▽カーボンニュートラルポートの形成など
■38 公共施設の計画的かつ効果的な保全更新
▽都市インフラの着実な保全更新の推進
▽公共建築物の将来を見通した計画的な保全更新の推進
▽時代に即した公共事業の適正な発注と担い手の育成など 提供:建通新聞社